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香港における完全直接選挙の実施を!
中国政府の民主化運動弾圧に抗議する!
2010年1月1日 香港元旦デモに3万人
2010年1月1日 香港元旦デモに3万人
2010年1月1日元旦、香港で行政長官と立法会の全面的な直接選挙の実施を求めるデモが行われた。当初の予想では参加者は一万人程度と考えられていたが、最終的には3万人もの香港市民が参加した。デモ隊は中国政府の出先機関である「香港連絡弁公室」までデモを行った。
■中国政府の意向を受けた香港政府の改革案に反発
香港政府は11月に、選挙制度改革に関する諮問文書を発表した。そこでは、現在、行政のトップである行政長官の選出委員を800人から1200人に増加したり、香港の国会にあたる立法会の定数を60議席から70議席に増加するなど、より広範な民意を反映することを掲げている。しかし、多くの市民が求めている行政長官の直接選挙や立法会における職能別議席(現30議席)の廃止などには触れなかったことから、民主派は反発していた。
1997年7月にイギリスから中国に返還された香港では、07年の行政長官選挙と08年の立法会選挙において全面的な直接選挙を実現することが民主派の課題になってきた。しかし実質的に最終的な決定権を持つ中国政府は、香港市民の要求を拒否し続けてきた。次期選挙は2012年に行政長官と立法会のダブル選挙としておこなわれる。現在、民主派は2012年のダブル選挙における直接選挙の実施を要求している。だが2007年末に中国の国会にあたる全人代は、2012年のダブル選挙における制度改革を否定した。今回出された香港政府の諮問文書はこのような中国政府の意向を強く反映したものといえる。
■全面的な直接選挙にむけた「奇策」
昨年来、立法会に3議席を有するラジカル民主派の「社会民主連線」などは全面的な直接選挙に向けた「奇策」を打つこと掲げてきた。それは、5つある立法会選挙区で民主派の議員をそれぞれ一人辞職させ、全五選挙区で補欠選挙を実施し、民主派が「行政長官と立法会の直接選挙」をマニフェストにして統一して補欠選挙を闘うことで、補欠選挙を実質的な「住民投票」に変えよう、という「全五選挙区での補選を住民投票にしよう」というものである。
民主派の最大党派である香港民主党はこの提案に後ろ向きであるが、2議席を保有する公民党がこの提案に賛同したことで、「全五選挙区での補選を住民投票にしよう」の動きはより現実的になっている。だが他のいくつかのラジカルな民主派も、実際に補欠選挙となれば支援はするが、さまざまな制約と条件があり候補者という「人」を選択する議会選挙とひとつのあるいはいくつかの「政策」を問う住民投票を同一視することは難しいなどの理由で、統一した動きにはなっていない。
しかし元旦デモでは、「全五選挙区での補選を住民投票にしよう」を掲げる「社会民主連線」などの隊列がもっとも活発であったことなどからも、全面的な直接選挙を望む香港市民の声は、今後も香港政庁、そして中国政府を突き上げていくだろう。
■中国国内の民主化運動弾圧にも抗議
今回のデモで掲げられたもうひとつの要求は、昨年12月25日に国家転覆罪に問われ懲役11年の実刑判決を受けた劉暁波の釈放である。劉暁波は1989年民主化運動に参加し、2008年には中国政治制度改革を掲げた「08憲章」を起草して当局に拘束されていた。香港の市民は、香港の政治制度のさらなる改革と中国本土の民主化は一体であることを敏感に感じ取っている。デモ解散地点の「香港連絡弁公室」前には中国の民主的改革を求めるコールが鳴り響いた。
言論の自由、表現の自由、思想・良心の自由は、民主的社会の実現のための最低限の条件である。「08憲章」はさまざまな民主的権利を要求し、中国共産党の一党独裁体制を厳しく批判している。その一方で、日本帝国主義と腐敗した蒋介石・国民党をたたき出した中国共産党と新中国建国の歴史的・階級的意義を一切無視するのみならず、それが全くの誤りであったかのように論述されている。また中国共産党の一党独裁体制と一体化した資本主義的改革を支持するという立場にも立っている。しかし「08憲章」がどのような思想に貫かれたとしても、その構想、公表、配布、署名収集などは、言論の自由、思想・良心の自由に属するものであり、それに対する弾圧は言語道断である。「08憲章」に代表されるさまざまな思想的模索は、たとえどのような方向であれ政治的変革への希求という、中国における政治・経済体制のオルタナティブにとって重要な提起であることには変わりない。中国共産党による弾圧は、これらの権利やオルタナティブを求める希求の萌芽の一切を踏みにじるものであり、「社会主義」の名において社会主義にむけた大衆的オルタナティブを踏みにじるものである。
■香港・中国、そして世界の民衆と連帯しよう
中国民主化運動に連帯することは、搾取も抑圧もないもうひとつの日本を求める青年・労働者階級の任務である。それは戦後補償を求める中国をはじめとするアジアの民衆に連帯することであり、日本に定住する全ての人の参政権を含む政治・経済的権利を法的に確立することであり、日本で働くアジアをはじめとする世界各国からの移住労働者の一切の権利を擁護・確立することであり、日系企業で搾取弾圧される世界の労働者のたたかいに連なることであり、沖縄をはじめとする在日米軍基地の閉鎖を政権に迫ることであり、政治・経済・文化・環境その他その他に関する一切の課題を民衆の交流の中でつむぎあげていくことである。
以下は、元旦のデモに際して香港で活動する社会主義グループの先駆社が発表した文章である。(H)
再び人民の力を誇示して
全面的な直接選挙をかちとろう
畢南山(香港・先駆社)
香港特別行政区政府が発表した政治改革案は次のようなものである。
・次期(2012年)の行政長官選出委員を1200人に拡大し、そのうちの100人を直接選挙で選ばれた区議(訳注1)の互選で選出する。
・立法会の直接選挙枠と職能選挙枠(区議枠)(訳注2)をそれぞれ5議席ずつ増加する。職能選挙枠(区議枠)の選挙権を有するのは直接選挙で選ばれた区議だけとする。
しかし、これらは2005年に否決された改革案(訳注3)の焼き直しにすぎないものである。もしこの改革案を受け入れて、それによるタイムスケジュールで政府に「政治制度を前進」させるのであれば、一体いつ真の直接選挙が実現できるのか全く分からなくなるだろう。
われわれは訴える。醜悪な改革法案を再度否決せよ!真の民主派は2012年の全面的直接選挙を勝ち取らなければならない。これこそが唯一の正しいタイムスケジュールである。われわれはこれ以外のタイムスケジュールを必要としない。
■その場で足踏みしたとしても政府案は否決すべし
「2005年の改革案を否決して、今回もまた否決するのであれば、市民はいったいどう思うだろうか。北京政府はどう思うだろうか。これでは北京、香港、香港政府の誰にとっても失敗だ」という批判がなされている。
だが、再度否決したからといって一体なにがいけないのか。われわれは、たとえその場で足踏みしたとしても(現在以上の前進がなかったとしても)政府案は否決すべきであると考える。なぜなら政府案は大衆を愚弄するものであり、直接選挙に向けた前進でもなんでもないからだ。もし人びとが政府案を受け入れてしまったなら、それは政府が主張する順を追って一つ一つ漸進するという謬論を受け入れることであり、政府は安心して直接選挙の引き伸ばしを行うだろう。そのときに人々は真の敗北を味わうことになるだろう。
■直接選挙と職能別選挙は相容れない
「直接選挙をどのように定義するのかの最終権限は中国政府にある。職能別議席を拡大しその公平性を保つことで直接選挙と考えることもできる」とも言われている。しかしこの職能別議席とは大財閥と特権的身分を持つ人のための選挙制度であり、政治的権利の平等である一人一票という直接選挙の原則に反するものである。たとえ職能別選挙の有権者枠が若干拡大したとしても、その非民主的な性質が変わるわけではない。保守派の主張は、香港人は自らの政治制度を決定する権利はなく、少数者の政治的特権を保障する政治制度を永続的に継続すると言っているに等しい。
■人民の力と自立的闘争
このような厳しい状況においては、民衆による下から上への動員、とりわけ2003年7月1日(訳注4)よりも強力な集団的行動と持続的闘争でしか直接選挙を勝ち取ることができないかもしれない。この間の「全五選挙区での補選を住民投票に」(五区請辞、変相公投)に関する議論は、香港市民がこれまでにもまして早急に直接選挙を希求し、民主派の主流派の穏健路線に不満を持っていることを反映したものである。
われわれは「全五選挙区での補選を住民投票に」という方針が、政府による全面的直接選挙の引き伸ばしに反対する一種の抵抗手段であるが、決定的な効果をもたらさないであろうと考える。真に決定的な効果をもたらすのは、政党の号令を座して待つのではなく、プロレタリア民衆がその運命を自らの手に握り、自立的な人民の力を堅持することであると考える。
中国国内における民主主義への弾圧がある限り、香港市民が真に民主主義を享受することはできないことは言うまでもない。民主化運動活動家の劉暁波に対する実刑判決からみても、中国共産党がこれからも権力にしがみつき、安易な民主的開放政策をとることはないだろうと考える。一党独裁を廃止することこそが、中国全土に自由と民主主義をもたらし、ひいては香港の民主主義に希望をもたらすことにつながる。
■社会・経済の民主化をかちとり、大企業による搾取を打ち破ろう
プロレタリア大衆は独裁政府の弾圧だけでなく、就職難、生活難にも見舞われている。昨年来の経済危機において、政府が救済したのは庶民ではなく少数の財閥のみであった。それゆえわれわれは民主主義とともに民衆の生活に関する権利をも掲げなければならない。
政治体制の民主化、市民全体による各級議会と政府の直接選挙だけでなく、社会経済領域における民主化を実現し、大企業が一切を支配する制度を打破し、貧富の格差を縮小し、社会的資源をまず民衆生活の需要を満足させるために使うことを要求しなければならない。
このような要求の実現は、民衆の団結と集団的な闘争によってのみ可能である。そして、香港の民衆間の団結だけではなく、中国国内および世界各地の民衆との団結が必要である。香港一地域の政治的民主化でさえ、すでに香港市民の努力だけに依拠することはできなくなっている。中国全土の人民との共同の努力が必要なのである。社会経済の領域における民主化においては、大企業の搾取に抵抗する各国のプロレタリア大衆との共同の闘争が必要である。
プロレタリア民主主義の実現を目指すすべての仲間たちは、宣伝を強化し、多数の人々の賛同を得て、それを強力な勢力に――とくに大企業の利益から自立した政党に――組織しなければならない。こうしてはじめて将来の成功が保証されるだろう。
2010年1月1日 元旦
(訳注1)区議会:18区、534議席。立法権や財政権限はない。534議席のうち、405議席が住民の直接選挙で選ばれる。のこり27議席は郊外の郷事務委員会の代表、102議席は香港政府からの委任議員。委任議員は全議席の5分の1と定められている。その多くは伝統的保守派や親中国政府の団体などの代表。
(訳注2)職能別議席:イギリス植民地時代から存続している選挙制度。立法会の60議席のうち30議席が職能別枠。郷議会局、漁能、保険、交通、教育、法律、会計、医学、衛生サービス、建設、建築・測量・都市計画、不動産、商業1、商業2、工業1、工業2、金融、金融サービス、スポーツ・芸能・文化および出版、貿易、繊維および衣料、小売、情報テクノロジー、飲食、区議会、労働の28業界に分けられる。労働の3議席を除き他はすべて1議席。選挙方法は、たとえば区議会枠の選挙は立候補も投票もすべて区議がおこなう。今回の政府案は、このうちの区議会枠を5議席増やし6議席とするというもの。
(訳注3)2005年に否決された改革案:2005年10月に政府の専門委員会が発表した2007年行政長官選挙および2008年立法会選挙改革案を年内に議会で通過させようとした香港政府の方針に反発し、12月4日に25万人の香港市民がデモに参加した。12月21日の立法会では可決に必要な三分の二の賛成を得られず、政府案は否決された。
(訳注4)2003年7月1日:中国政府の意向を汲み国家分裂罪や政府転覆罪を新設しようとした香港政府に対して中国返還の記念日である7月1日に香港市民50万人が街頭デモに参加した。「かけはし」2003年8月4日号を参照
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