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待ちに待った『私の西域、君の東トルキスタン』がついに日本で出版された。著者は『黄禍』『ダライラマとの対話』『天葬:チベットの運命』『逓進民主』などの話題作を国外で出版してきた漢民族の作家、王力雄さん。

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『私の西域、君の東トルキスタン』
発行日/2011年01月24日
著/王力雄 訳/馬場裕之
監修+解説/劉燕子
発行/集広舎
A5判/並製/472頁
定価/3,486円(税込)

王氏は『天葬:チベットの運命』が出版された翌年の1999年1月、次期作品の資料収集のために新疆ウィグル自治区を取材中に国家機密窃取の容疑で40日間拘束された。本書の第一部はこの事件の一連の顛末が描かれている。中国の国家安全機関による尋問やスパイ強要など、下手なスパイ小説など比べ物にならないくらい、読者をぐいぐいとストーリーに引き込む。だが本書の本題は、拘置所で同房となったウィグル青年、ムフタルとのウィグル民族と漢民族の関係性をめぐるさまざまな「対話」にある。

ムフタルとの「対話」は、王氏が拘置所から釈放された後も続く。釈放後の2003年から2006年の間に4回、新疆ウィグル自治区にムフタルを訪ね「対話」を重ねた。第二部はその訪問記、そして第三部はムフタルへのインタビュー形式で構成されている。訪問記や対話の間にも、「まさに典型的な植民地の形態」と王氏が描写する新疆ウィグル自治区の現状をえぐりだす王氏の鋭い観察などが描かれている。

第四部は、「ムフタルへの手紙」という形式をとった王氏による「新疆問題考察」である。

王氏やムフタル氏の主張については、いろいろと意見があるだろう。だが、形骸化した「民族自治」の名の下にウィグル人がどのような抑圧下にあるのか、そして新疆ウィグル自治区においては「抑圧民族」である漢民族の間においても経済的・政治的不平等がどのように広がっているのかなど、なかなか日本語の文献では紹介されない現実を王氏の深い描写を通じて知ることができるだろう。

本書の日本での出版に尽力した劉燕子さんが解説を寄せている。新疆の歴史や現状をコンパクトにまとめ、王力雄氏の業績などを紹介し、2009年7月のウルムチ事件などにも触れている。新疆やウィグル問題に初めて接する人にも親切な解説になっている。

日刊ベリタではウルムチ事件後のインタビュー翻訳記事が掲載されている。

(H)

◎2009年7月のウルムチ事件については以下も参照してください。
抑圧に抗議するウィグル人民への暴力的弾圧を許さない! 週刊かけはし2009.7.20号
中国  二重の抑圧――新疆短評(上) 週刊かけはし2009.9.7号
中国  二重の抑圧――新疆短評(下) 週刊かけはし2009.9.14号

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