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情勢の流動と不安定化は深まる
労働者市民の運動を掘り起こそう
沖縄から米軍基地をなくそう! 派遣法抜本改正を実現しよう

●民主党大敗北と衆参ねじれ


 7月11日投票の参院選結果は、昨年8月30日の「政権交代」総選挙の結果とは対照的に、民主党の地滑り的大敗北となった。民主党は、比例区得票数では第一党の座を維持したものの、選挙区では自民党の39に対して28にとどまり、改選議席54を十議席も下回る44にとどまった。

他方、自民党は改選議席三十八を十三も伸ばし、51議席を獲得して「改選第一党」となった。この結果は、二十九ある一人区のうち自民党が二十一で勝利したのに対し、民主党がわずか八しか得られなかったことが最大の要因である。前回、2007年参院選では、一人区での自民党の獲得議席はわずか6であり、民主党を中心とする当時の野党が23を獲得した。まさに正反対の結果となった。民主党が参院の改選議席で第一党の地位を失ったのは、小泉政権発足直後の2001年七月以来、九年ぶりである。

その結果、非改選を含めた参院の総議席数で「与野党逆転」が生じ、自公政権当時と同様の「衆参ねじれ」現象になった。2007年参院選でもたらされた「衆参ねじれ」では、衆院で自公与党が三分の二の多数を得ていたため、参院で否決された法案を衆院「再可決」によって成立させることが可能であった。しかし今回の場合は、民主党・国民新党の与党は衆院で三分の二を占めていない。したがって菅民主党政権は、あらゆる法案について野党の協力が得られないかぎり成立させることができない。菅政権は、早くも政権運営もままならぬ危機の局面を迎えたのである。

●みんなの党躍進 低迷続ける共社

自民党以外で議席を伸長させたのは、「公務員の大幅削減で小さな政府」、「名目4%以上の経済成長により十年間で所得五割増」などのデマゴギーに満ちたウルトラ新自由主義路線を掲げ、ベンチャー企業経営者・外資系金融機関幹部社員、松下政経塾出身者などをそろえ、破綻が明白な小泉・竹中構造改革路線の踏襲を打ち出したみんなの党であった。

みんなの党は、比例代表選挙で七百九十四万票以上、13.6%を獲得し、公明党を上回って第三党となった。東京、千葉、神奈川の選挙区でも民主、共産との激戦を制して初議席を獲得した。昨年の八月総選挙の直前に結成されたみんなの党が、衆院選比例ブロックで得票したのは約三百万票であり、それから比較しても倍以上の急増である。毎日新聞が七月七日、八日に行った電話世論調査では、昨年の総選挙比例投票で民主党に投票した層の17%、自民に投票した層の13%が今回は比例投票でみんなの党に投票すると答えた、という。

議席を伸ばした自民党も比例区投票では2004年参院選の千六百七十九万票、2007年参院選の千六百五十四万票を二百万票以上も下回る千四百七万票しか獲得できなかった(比例区得票率では07年の28・08%から今回は24・07%に下落)ことを見れば、みんなの党が「唯一の勝者」だったと言える。

われわれは、今回の参院選で共産党、社民党に投票するよう呼びかけた。共産党は総力を上げて闘った東京選挙区で、「背水の陣」を敷いて比例から転出させた小池晃議員を当選させることができなかったのをはじめ、比例区の得票率も2007年参院選の7.48%から6.10%へ一ポイント以上落ち込み、改選議席を一下回った。社民党の比例区得票率も2007年参院選の4.47%から3.84%へ、0.6ポイント以上低下した。こうして共産、社民の左派政党合わせても得票率は10%を割ることになったのである。護憲を掲げる「左派」全体で得票率が一割を切ったのは初めてのことだ。

●投票率最低を記録した沖縄

 鳩山政権崩壊の大きな要因となった「普天間移設」問題での裏切りに怒りを募らせる沖縄はどうだったか。

とりわけ「ヤマト」においては参院選の争点から「普天間移設」問題は、選挙の争点から完全に外されてしまったが、沖縄では民主党は候補者を擁立することができなかった。急きょ無所属で立候補した沖縄平和運動センター事務局長で社民党推薦の山城博治候補が善戦し、「県内移設反対」を表明した自民党現職の島袋安伊子候補を猛追したものの、共産党が独自候補を出していたこともあり、当選にはいたらなかった。社民党の今回参院選の沖縄での比例区得票は約12万票に達し、昨年八月の総選挙での沖縄での比例区得票を約四万六千票も上回った。沖縄での比例区得票第一党は22.7%で社民党だった。

 他方、民主党沖縄県連代表の喜納昌吉参院議員も比例区での再選を果たせなかった。沖縄県の投票率は全国最低の五52.44%。この数値は前回2007年参院選を八ポイント近く下回り、沖縄が国政選挙に復帰して以来の最低の数字である。ここには「最低でも県外移設」の公約を自ら踏みにじって沖縄の民意を無視し、「日米同盟」の「抑止力」なるものにしがみついて「辺野古移設」案に舞い戻った民主党政権に対してのみならず、「ヤマト」の政治・政党全体への沖縄の人々の底深い不信が反映している。少なからぬ沖縄の人々は、こうして「ヤマト」の都合で「与党か野党か」の選択を強制されることそのものを「ボイコット」したとも言えるだろう。

●菅政権の危機と右派への傾斜


 六月二日、鳩山首相は「政治とカネ」、「普天間移設」問題での沖縄の民意に応えることができなかったことを大きな理由として辞任した。それは参院選を目前にして支持率を急落させた民主党が、小沢一郎前幹事長を鳩山と抱き合わせで辞めさせ、「普天間」問題を後景に退けることで、イメージアップを図る選挙戦略でもあった。同時にそれは民主党政権を「対米追随」と新自由主義的な「経済成長戦略」に復帰させ、社民党と国民新党を切り、米国と財界からの「信頼」を回復させる右転換を意味していた。われわれは菅政権の性格を「中道左派的」装いを最終的に払拭させ、「現実主義的」な「中道右派」コースに舵を切るものと規定した。

 民主党のこの賭けは成功したかに見えた。菅首相の下で民主党の支持率はV字型に回復した。しかしそれは全く一時的なものであり、選挙戦に入ってからの「消費税10%への引き上げ」発言を契機に、菅政権と民主党の支持率はまたも急速に落ち込むことになった。

 しかし「消費税率10%への引き上げ」発言が、民主党の選挙での大敗の引き金になったとしても、それはあくまで「引き金」にすぎない。根本的には、「日米同盟」という米国の覇権主義的重圧と金融・経済のみならずエネルギー・食糧・気候変動等、全般にあたる資本主義システム総体の危機に立ち向かう変革的「対案」を民主党が持ち得なかったことに規定されている。

 菅政権の下での民主党の参院選マニフェストは、「政権交代」を掲げた昨年夏の総選挙マニフェストに比べても、著しく「現状維持」的で保守的な性格を強め、自民党との差異はほとんどないものに化してしまった。こうした中での「法人税減税・消費税増税」の打ち出しは、「財政危機」下での民主党による「ばらまき」という自民党をはじめとする右派野党の攻撃にはずみをつけ、急速な民主党離れを引き起こす結果となった。とりわけ「一人区」に代表される地方の疲弊が「自公協力」に支えられた自民党の勝利、都市の相対的高所得者層、不安定雇用と就職難に直撃された若年層の間に、「小泉ブーム」と同様のみんなの党人気を浸透させることになった。

 共産党、社民党の引き続く低迷は、沖縄をほとんど唯一の例外として、民主党政権下で有効でパワフルな大衆運動を展開することができなかった信頼しうる左翼勢力の不在に規定されている。

●この局面でこそ大衆運動が核心

 選挙後の「政局」はいっそうの混迷と複雑な情勢を作り出している。すでに民主党の中では菅首相や枝野幹事長などの党執行部の責任を追及する声が渦巻き始めている。いずれにせよ菅政権は、参院選後の政治運営のためには自民党からみんなの党まで含めた「政策合意」や新たな「連立」の模索に踏み込まないわけにはいかない。それは菅民主党政権の新自由主義的政策への傾斜に一層の拍車をかけることになるだろう。

 野党の側は、当面、菅政権の分解・危機を見越して「連立」の誘いを拒否し、菅政権を「解散・総選挙」に追い込み、もう一度の「政権交代」を実現しようとする姿勢を強めている。しかし、最大野党の自民党の選挙基盤の衰退は、今回の参院選挙でも進んでいる。自民党の比例区での得票は大敗した前回2007年の参院選よりもさらに低く、業界団体などの集票力はいっそう落ち込んでいる。他方、みんなの党もきわめて不安定な「風」頼みの脆弱な実体しか持ち合わせていない。

 経団連などの財界は、何よりも「政治の安定」と「強力な政府」を望んでいる。経団連は資本のグローバルな競争を生き抜くためにも、安定した政府の枠組みを望んでいるのだ。しかし、支配階級の切実な願望にもかかわらず、現在の状況は必然的に、新たな離合集散による「政界再編」の局面をもたらすだろう。すなわち議会政治と政権の不安定の時代がさらに継続することになるのである。小泉政権後の、一年たらずで首相があいついで入れ替わる状況を克服する展望は、いまだ切り開かれていない。

 このきわめて流動的な局面の中で、われわれは「左翼の危機」を突破するオルタナティブな反資本主義的左翼政治潮流形成への努力を継続し、ステップアップしなければならない。そのための基盤は、何よりもダイナミックな労働者・民衆の運動の発展にある。沖縄の闘いに応え、改憲・日米同盟強化の動きを阻止し、あらゆる排外主義の策動にノーを。雇用破壊や「貧困と格差」と対決し、生存や環境の危機を加速するグローバル資本主義のシステムを変革するための多様な運動の掘り起こしと合流を。(7月13日 K)

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