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 十月十七日から二十日までの日程で「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(ICNND)の最終会合が広島市で開催された。ICNNDは日本の川口順子・元外相とオーストラリアのギャレス・エバンズ元外相を共同代表とし、米国、ロシア、インド、パキスタンなどの元政府高官ら十五人の委員と二十八人の諮問委員で構成されており、昨年十月のオーストラリア以来、七回の会合、地域会合を開催し、来年一月には報告書を発表することになっている。この最終報告書は来年五月の核不拡散条約(NPT)再検討会議を射程に入れたものだ。

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 十月十七日に広島入りしたICNNDの委員は午後ホテルで「NGOとの意見交換会」に出席した。この中で秋葉忠利広島市長は、平和市長会議が訴える「二〇二〇年までの核兵器廃絶」を「現実的な期限」と主張し、市民代表は核兵器禁止条約の実現を求めた。また英国CNDの元副議長で英アクロニム研究所所長のレベッカ・ジョンソンさんは核保有国による「核先制不使用」宣言をICNNDの最終報告書に盛り込むよう宣言したが、エバンズ共同代表は「『するべきこと』を並べても、それではただの要望書」だと反論した(「朝日」10月18日)。ここではICNNDのこれまでの会議に出席した日本政府側の関係者が「北朝鮮の核」などを理由に、提言に「先制不使用」を盛り込むことに消極的だったという事情が反映している。

 実際、十月二十日までの非公開討議を経てまとめられたICNND報告書の最終原案は「二〇一二年までに包括的核実験禁止条約(CTBT)を発効させる」「核の役割を核攻撃の抑止に限定し、非核国には使用しない」「二〇二五年までに核保有国同士の先制不使用にも合意し、核兵器禁止条約作成の準備を進める」という、きわめてあいまいなものになってしまった。何よりも被爆国である日本政府が「核の先制不使用」の足を引っ張り、「核の傘」という「拡大抑止」論にしがみついていることを厳しく批判しなければならない。

 ICNNDや外務省に対する働きかけを市民社会の立場から進めてきたICNND日本NGO連絡会は、ICNND広島会合にあたって十月十七日、十八日の両日、一連の行動に取り組んだ。

広島市が主催して旧広島市民球場で行なわれた「核兵器廃絶のための市民集会」の後、午後五時半から、市民連絡会と広島実行委員会は原爆ドーム前で「NUCLEAR FREE NOW!」(今こそ、核兵器をなくそう!)」のキャンドル文字をシスター山本紀久代さんのギターと歌声が響く中、浮かび上がらせた。キャンドルのあかりの中で二百人が参加して集会が行われ、核戦争防止医師会議(IPPNW)代表のティルマン・ラフさん、英アクロニム研究所所長のレベッカ・ジョンソンさん、WORLD PEACE MARCHなど外国からの参加者とともに、在米被爆者の会の笹森さん、軍縮教育家のキャサリン・サリバンさん、平和文化センター理事長のスティーブ・リーバーさん、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)共同代表の森瀧春子さん、日本被団協事務局長の田中熙巳さんなどが次々に発言した。

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ティルマン・ラフさんは「爆弾であろうと平和利用であろうと核エネルギーが使われる時はヒバクシャが生まれる」と警告し、スティーブ・リーバーさんは「ICNND共同代表のエバンズ氏は中国やイスラエルと核問題について話す気はないのか、と私たちに述べたが、エバンズ氏自身もイスラエルや中国とは話していない。イスラエルという国ではなくイスラエルの誰が、どの企業が問題を起こしているかと考えるべきだ。日本でも『核の傘』が必要という意見が聞こえてくるが、誰が、どの企業がそういうことを言っているかをはっきりさせ、その人たちを打倒する戦略を見つけよう」と訴えた。

キャンドル集会の最中にICNNDの委員たちを乗せたバスが通りかかり、エバンズ元豪外相や川口順子元外相らがキャンドルの傍に立ち寄って集会参加者にあいさつするというハプニングも起きた。

翌十月十八日には、幟町の世界平和記念聖堂で国際市民シンポ「核兵器のない世界へ――いまこそ飛躍を! ヒロシマから2010年ニューヨークへ」が三百人の参加で開催された。

主催者あいさつを行なった内藤雅義さん(ICNND日本NGO連絡会共同代表)は、「一月に発足した連絡会は、核廃絶に向けて現在が決定的に重要だという認識を持っている。四月にはオバマ米大統領が「核のない世界をめざす」というプラハ演説を行い、九月には国連安保理で核廃絶決議が全会一致で採択された。アメリカでは八年ぶりに核態勢見直し(NPR)が行なわれる。来年にはNPT再検討会議が予定されている。これは歴史的転換点だ。オバマは核軍縮政策に縛られざるをえない」と述べ、その中で日本が重要な位置を占めている、と提起した。

「今やこの転換の最大の障害は日本の外務省、防衛省、政治家たちだ。核先制不使用は米国の核抑止力を妨げる、という発言にそれが示されている。岡田外相は核の先制使用を批判した。しかしそれは鳩山政権の政策として明らかになってはいない。今こそ核廃絶のリーダーシップを取るべきだ」と内藤さんは続けた。

 来賓あいさつをした秋葉広島市長は、「二〇二〇年までにすべての核兵器をなくすことをめざす。広島・長崎議定書を来年のNPT再検討会議で決議することをめざす」と訴えた。

 シンポジウムのパネリストはレベッカ・ジョンソンさん、ティルマン・ラフさん、田中熙巳さんと川崎哲さん(ピースボート共同代表)。ラフさんは医師としての立場から放射能が人体にもたらす影響を詳細に説明し、田中さんは十三歳の時に長崎で被爆し、五人の身内の命を一挙に奪われ。伯母を野原で自ら荼毘(だび)に付した過酷な体験を語った。

 レベッカ・ジョンソンさんは英国でトライデント原潜の更新を阻止するために闘った経験を語りつつ、「核の抑止力は戦争の脅威から人類を守らなかった。不正・貧困・軍事主義と闘い、非核による抑止、人権を守るための核廃絶を」と強調した。川崎さんは、日本でいま私たちに何ができるかを問わなければならないと訴え、「岡田外相の核先制不使用への支持は、いまだ政府見解になってはいない。それを日本政府の立場にしなければならない。核兵器禁止条約は時期尚早という意見を覆そう。アジアの軍事的緊張は平和的に解決できることをはっきりさせよう」と提起した。

 質疑の中で川崎さんは「北朝鮮の核の脅威」論に対して、「核を政治的・軍事的取り引きの材料としている北朝鮮の政府に対して『北東アジア非核地帯』を作るための交渉の中で、核にすがる北朝鮮の動機を解消させる努力」について説明し、レベッカ・ジョンソンさんは「技術的には核廃絶は可能だ。これだけ大量の核兵器がある中で、核依存を続けていくことがいかに非現実的であるか説得すべき」と語った。

 シンポジウムは最後に「核兵器禁止条約の交渉の即時開始」を国際社会に訴えるとともに、とりわけ日本政府に対して「核の『先制不使用』政策への支持を公式に宣言し、米国に対しても求める」「核兵器禁止条約交渉開始への支持」「北東アジア非核地帯をめざす政治宣言を発し、核兵器に依存しない安全保障政策へ」「ミサイル防衛計画の即時見直し」「核燃料サイクル政策への見直し」を求める決議を採択した。提案者は、広島実行委員会委員長の青木克明さん。最期に閉会挨拶を田崎昇さん(核廃絶地球市民長崎集会実行委員会事務局長)が行い、来年2月に長崎集会への結集を訴えた。

 日本政府が核廃絶への妨害者となっているこの現実をはっきり見据え、労働者・市民が自ら世論を喚起して、真の「チェンジ」を強制していくことが決定的に重要なのだ。(K)

 ●追記:
 ICNND広島会合が閉幕した後の共同議長記者会見=(合意された概要)によれば、

(1)2025年までに「核兵器が1,000発の世界」をめざすという案があったが、その合意すら達成できなかった。記者会見では2025年にめざす数字は発表されなかった(共同通信は「2025年に2,000発前後に設定したとみられる」と報じている)、

(2)核兵器の役割の縮小に関しては、「核の唯一の役割は核抑止である」とする宣言を2012年までに、核の「先制不使用」を2025年までに達成することが「委員会で合意された」とのこと。これがNGOとの対話で口をすっぱくして彼らが言っていた”現実政治”の中身だ。

我々は、大衆的かつ国際的な反戦反核運動の高揚を通じて、現実政治を動かそうとする。大衆的な労働者・市民の国際政治への登場なくして、核軍縮、ましてや核廃絶は手繰り寄せることはできない。

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