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ミサイル迎撃臨戦態勢許すな
北朝鮮は「ロケット発射」をやめろ
米日韓一体のMDシステム発動は「先制攻撃」への道だ
 
ミサイル破壊措置命令発令

 三月二十七日、麻生内閣は安全保障会議を開き、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が四月四日から八日にかけて行うと三月十二日に発表した「人工衛星」発射について、これをミサイル発射だとして「弾道ミサイル破壊措置命令」を初めて発令した。今回の命令は自衛隊法八十二条の2第3項(「日本に飛来する恐れがあるとは認められない」が、事態の急変に備え、あらかじめ防衛大臣の判断で原則非公表の形で命じる)にもとづき発令されたものである。「原則非公表」である3項での発令を公表したことは、この「破壊命令」が民衆に向けた宣伝キャンペーンとしての性格を強く持っていることを明らかにするものだ。

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 同日夜には航空自衛隊入間基地に配備されている弾道弾迎撃地対空ミサイル・パトリオット3(PAC3)の四個高射隊が市ヶ谷基地、朝霞基地、習志野演習場に向けて移動した。三月二十八日には、佐世保基地と横須賀基地から海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を配備したイージス艦「ちょうかい」と「こんごう」が日本海へ、そし
てイージス艦「きりしま」が太平洋に出港した。さらに三月二十九日には空自浜松基地のPAC3部隊が、岩手県と秋田県の自衛隊基地に向けて出発した。これは北朝鮮の「人工衛星」発射を絶好の口実とした準「戦時体制」構築への実戦訓練である。

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 麻生政権は、北朝鮮の「人工衛星発射」を、MD(ミサイル防衛)システムを現実に発動するための絶好の機会として利用しているのだ。幾兆円もの税金をつぎ込みながら、その「有効性」に疑問が投げかけられているMDシステムに国民的合意をとりつけるための絶好のチャンスとして、政府・防衛省は意気込んでいる。

緊迫化する東北アジア情勢
 
 日米韓三国は、二月末に北朝鮮の「長距離弾道ミサイル」発射準備の動きを察知して、それがたとえ「人工衛星」発射実験だったとしても、ミサイル発射と人工衛星打ち上げは「同一の技術・構造によるもの」と主張し、「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動」の停止を北朝鮮に求めた国連決議1718違反だという点で意思一致した。三月九日から二十日まで米韓両国は米軍だけで二万六千人の部隊を動員して合同軍事演習「キー・リゾルブ」と野外機動演習「フォール・イーグル」を行った。さらに三月二十三日には米海軍横須賀基地配備の弾道ミサイル迎撃能力を持つイージス駆逐艦「ステザム」が青森港に入港し、日本近海での「ミサイル発射」警戒活動を開始した。韓国海軍も最新鋭のイージス艦「世宗大王」を日本海(東海)に配備するとしている。このようにして日米韓による「ミサイル迎撃」のための共同監視態勢が敷かれたのである。

 北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は、こうした日米韓共同の「ミサイル迎撃」を非難して、かりに迎撃すれば即座に反撃し、三国の本拠地に「正義の報復打撃戦」を開始すると警告した。その一方で北朝鮮政府は、宇宙空間の利用などの二つの国際条約に加盟し、「人工衛星」発射を「国際海事機関」(IMO)に通告し、国際民間航空機関(ICAO)とIMOに航空機や船舶の安全に必要な資料を通報したとされている。このあたりに硬軟とりまぜた北朝鮮政府の駆け引きを見ることができる。

 米国のオバマ政権は、一方で北朝鮮の「ミサイル」に対する軍事的監視と警戒態勢をとりながらも、こうした北朝鮮の駆け引きに対しては、ブッシュ政権の後期の政策を継承しつつ「六カ国協議」の枠組みを維持して、北朝鮮の「非核化」を達成するために相対的に「柔軟」な対応を見せているようである。「前回のミサイル実験時にはペリー元国防長官らが先制攻撃でテポドン2を発射前に破壊すべきだと提唱した。しかし今回は北朝鮮が人工衛星の打ち上げと説明し、実際に国際的な手続きを進めていることもあり、冷静な受けとめが目立つ」(朝日新聞、3月27日)。同記事は「迎撃」などの過剰反応を控えよとする慎重論がオバマ政権の政策スタッフの中では語られている、と紹介している。
 
「集団的自衛権」行使容認の水路

 米国の「慎重論」に対してむしろ強硬な突出が目立っているのは日本の側である。麻生首相は「政権浮揚」のためにも北朝鮮の「ミサイル」について「弱腰」を避けるべきと判断しており、三月十九日の参院予算委員会の答弁では、国連安保理での議論とは別に、日本独自の制裁を強化する可能性も示唆している。マスメディアもまた「人工衛星」という北朝鮮側の主張をのっけから無視し、「弾道ミサイル発射」論を煽り立てている。

 石原都知事は三月二十七日の定例記者会見で「怒られるかもしれないが、非常に拙劣な技術で彼らが打ち上げ、変な物が間近に落ちる方が日本人は危機感を持つというか緊張感を持つんじゃないか」と、極右としての本音を述べ立てた。支配階級は、国民的な排外主義的危機感を煽ることで、「対テロ」グローバル戦略の一環としての軍事的作戦への合意をとりつける材料を北朝鮮によって提供されたことにほくそ笑んでいる。

 さらにわれわれが注意しなければならないのは、今回の「弾道ミサイル破壊措置命令」が、旧来の政府見解を否定して、集団的自衛権行使を容認するための契機となりうる、という問題である。安倍政権の下で設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、安倍が辞任した後の昨年六月になってようやく「報告書」を作成した。現憲法の下では「集団的自衛権」の行使はできないとしていた政府見解を変更する目的で設置された同懇談会の報告書は、「米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃」について一項を起こし、次のように述べている。

 「我が国に飛来する弾道ミサイルは個別的自衛権で撃ち落せるが、米国に向かうミサイルを撃ち落すことは集団的自衛権の行使にあたるのでできないとの立場、あるいは、いずれの場合か判断できないため対応が遅れるという状況は、弾道ミサイルに対する抑止力を阻害する。│以上にかんがみ、米国に向かうかもしれない弾道ミサイルを我が国が撃ち落す能力を有するにもかかわらず撃ち落さないという選択はあり得ない」。「……米国に向かう弾道ミサイルを我が国が撃ち落せる場合には撃ち落とすべきであるということが我が国の政策目標である以上、この目標達成を法制的に可能にする方法としては、集団的自衛権の行使を認める以外にないと思われる」。

 今回の「人工衛星」発射に使われるロケット「テポドン2」が、弾道ミサイルに使用された場合、最大射程は八千キロ以上となり、米国のアラスカ全域や西部地域まで射程圏内に入ると米韓情報当局が推定している、と報じられている(毎日新聞、3月15日)。したがってこの「ミサイル破壊措置命令」は、米国に向かう弾道ミサイルを撃墜する「集団的自衛権」の現実的行使にほかならない。この「既成事実」が「集団的自衛権行使」を憲法上不可とする現在の「政府見解」の変更に拍車をかけるものであることを厳しく批判しなければならない
 
金正日独裁体制の危機と冒険

 最後にわれわれが強調しなければならないのは、今回の北朝鮮・金正日独裁体制の「人工衛星」発射の意図を明確に批判することである。

 金正日独裁体制が、本気で米本土や日本への「ミサイル攻撃」を行うと考えることはできない。北朝鮮は、五年半ぶりに三月八日に行われた最高人民会議第十二期代議員選挙を経て、四月にも最高人民会議全体会議を開催し、金正日を国防委員長に推挙すると推測されている。金正日の健康問題が深刻となっている今、早期に「後継者」を確定し国家的求心力を維持することは体制存続にとって緊急の課題である。そして、金正日への忠誠・崇拝を再確立することが不可欠であり、「人工衛星」はそのための劇場的効果を持つことが期待されている。

 危機に陥った体制を維持するために、つねに挑発的な「瀬戸際政策」によって軍事的緊張をあおりたて、飢餓にさいなまれる民衆を人質にとり、「混乱と不安定化」の恫喝で体制維持の保障を取り付けようとする金正日独裁体制の政策はいまや決定的な限界に到達している。そして北朝鮮の軍事的冒険主義は、危機に直面する米日韓の反動的支配階級の軍事的一体化、排外主義的統合にとって絶好の材料を提供している。

 そしてまた米日韓の軍事的「迎撃」=「先制攻撃」態勢は、金正日独裁体制にとっても体制防衛の締めつけを強化する上で望みどおりの反応なのである。

 何よりも北朝鮮の民衆との連帯をかけて、日米韓の「ミサイル迎撃」臨戦態勢に反対すると共に、北朝鮮の金正日全体主義的独裁体制による「ロケット」発射に反対しよう。
 
・麻生政権は「弾道ミサイル破壊措置命令」撤回を。
・MD(ミサイル防衛)体制の廃棄を。
・米軍再編反対、朝鮮半島の非核化を。東アジアからすべての米軍基地を撤去せよ。
・北朝鮮は「ロケット」発射をやめ、核開発計画を放棄せよ。
・「拉致問題」の全容を明らかにし、すべての拉致被害者への謝罪と補償を。
・日本の朝鮮植民地支配への謝罪、被害者への補償に基づく日朝国交交渉の再開を。
・民衆の連帯で東アジアの「和解と平和と人権・民主主義」を。

 (3月30日 K)

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