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講師:村中哲也さん(元航空連副議長・元全日空運航乗務員)
5月27日、成田プロジェクトは、ピープルズプラン研究所で村中哲也さん(元航空連副議長・元全日空運航乗務員)を講師に迎えて学習会を行った。テーマは、「元運航乗務員からみたフェデックス事故」。
三月二十三日、成田空港A滑走路で米貨物航空会社フェデックス機が着陸に失敗し、大炎上、乗員2人が死亡する大事故が発生した。テレビ報道では事故シーンが放映され、「成田空港で初めての事故死亡者」などという見出しで世界的にも衝撃が走った。事故後、国土交通省運輸安全委員会、米国のNTSB(国家運輸安全委員会)が共同で事故の原因調査に入っているが、その結果報告はまだ公表されていない。
それにもかかわらず森中空港会社社長は、「フェデックス機事故によって23日は、各国の航空機170便が欠航、他空港に行き先変更となってしまい膨大な損失となってしまった」から北伸工事を10月までに完成させ、2010年3月供用予定だったのを半年前倒して10月22日に供用強行することを明らかにした。事故を利用した露骨な営利優先主義だ。
成田プロジェクトは、空港の過密運航が増え、人命・安全軽視が強まっている状況下、フェデックス機事故に焦点をあて、成田空港が抱える問題点を浮き彫りにし、今後の運動に生かしていくために設定した。
欠陥?MD11型機
村中さんは、冒頭、航空機事故発生のメカニズムから取り上げ、「クリティカル・イレブンミニッツ(起こりやすい魔の11分間。離陸時3分と着陸時8分が事故が起きやすい)という言い方がある。事故発生を統計から見て時間軸で言ったものにすぎないが、航空機が非常に不安定な状態のことだ。フェデックス機事故の映像を見れば、明らかにウインド・シア(気流が乱れやすく、風向きや風速が急激に変わる)に起因しているなと思われる。この現象は上空ではしょっちゅう発生しており、ウインド・シアは成田空港だけで起きている現象ではない。逆説的に言えば、今回の事故の結果から起きないような空港設計をいかにしていくのかとして問題設定していくべきだ」と提起した。
第二のアプローチは、MD11型機そのものについて分析した。
村中さんは、「MD11型機は軽量化、抵抗減のために機体が下降傾向になる設計だ。さらに〇・二秒ぐらいの操縦遅れが生じオーバーコントロールが発生する欠陥機種だと言われている。飛行機は、空気の中を動かすことによる複雑な難しさを持っている。だからこそ安全対策を重視しなければならないが、設計・事業経営は経済優先思想によって軽視されてしまう傾向がある。つまり、機体の軽量化のやりすぎ、ハイテク技術革新を口実にして省力化が進行してしまう。事業経営では安全基準の緩和、飛行訓練時間減少、労働条件の改悪などによって乗務員の負担が増し、これらが総合して空の安全が脅かされていくのだ」と強調した。
ボタンのかけ違いが続いていることについて
第三は、成田空港の存在そのものについて検証した。
村中さんは、過密な運航と危険性を増す空域問題、国際的な空港建設基準の安全性、利便性、セキュリティーなどから検証した。
さらに「空港は、排気ガス、騒音など環境問題も非常に重要だ。そういう意味で二十四時間空港は環境保全との関係で見直す必要がある。周辺地域・住民との共存も必要だ。地域の発展に貢献できるか問われる。そういう観点から成田空港は、地域の住民の了解ぬきで着工というボタンの掛け違いが今もって改められていない。住民との摩擦が生じれば、航空労働者にとっても影響があり、私たちはほんとに困る。だから国際線用滑走路が一本しかなく、誘導路もたくさんあって危険だ。こういったことは了解ぬきに着工し、使っていることの反映だ。30年以上もボタンのかけ違いが続いており、それをもとに戻す必要がある。また、巨額な国税を投入し、多くの人々が関与してきた。だから軽々しく空港廃止は言えない。こういう両面の矛盾を真正面にすえて地域、利用者、労働者は話し合う必要があり、理解を深めていくことができるのではないか」と問題提起し、新しい選択肢を模索していことが求められていると結んだ。
らっきょう工場の平野靖識さんの報告
討論では、東峰現地から参加したらっきょう工場の平野靖識さんがフェデックス機事故時の状況を報告した。
また、「事故直後は、3分以下の間隔で暫定滑走路に着陸してくる飛行機が次々と降りてきた。成田空港は、空っ風はしょっちゅう吹いているものだ。だけど事故が起きた後も強風は続いていたのだから、同じような事故が起こるのではないかと非常に怖かった。らっきょう工場では9人が働いていたが、みんな同じような気持だったのではないか。島村家の人達も『未曾有の事故が起きたのだから空港運航を停止すべきだ。原因がわかるまで閉鎖すべきだ』と言っていた。私もそのように思った」と批判した。
今後の課題
最後に村中さんは、成田空港会社が30万回発着回数を増やそうとしていることに対して、「問題の根源は、日米航空協定で日本がほとんど丸呑みしてきたことだ。不平等協定である。社会の様々な要請からすれば、飛行制限する検討が求められている。ほとんどアメリカの言いなりになるのではなく、協定破棄の姿勢も必要だ」と述べた。
最後に司会の大野和興さんは、「村中さんから地域、利用者、労働者の話し合いのテーブルについて提起があった。それは第二次シンポジウム的なものが必要なのかなと感じた。新たな課題として継続して論議していこう」とまとめた。(Y)