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3月29日から、ドイツのボンで開催されていた気候変動対策を協議する気候変動枠組み条約と京都議定書の二つの特別作業部会が4月8日に閉幕した。今年12月7日からデンマーク・コペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組条約締約国会議の第15回会議(COP15)では、京都議定書に定めのない2013年以降の地球温暖化対策を決定する。今回の作業部会ではCOP15に向けての次期枠組み交渉などの大きな前進が望まれていた。

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地球温暖化からこの惑星を救うために、温室効果ガスの排出を今後10年から15年のうちに減少させ、2050年には1990年比で半減させなければならない。排出量の多い日本などの工業国は、2020年に90年比25~40%(中期目標)、2050年には80~95%(長期目標)を削減することが必要とされている。

だが、地球温暖化に歴史的、政治的な責任を持たなければならない帝国主義諸国は、2020年までの中期削減目標についての議論において、無責任・不誠実な対応に終始し、先進国の削減幅の策定を先送りした。


◆責任を果たさず途上国を挑発する日本政府

2020年までに45%削減という大幅な削減目標を提示したツバル政府は、この作業部会が先進国先進国の目標を決めるだけでなく、そのプロセスの進展自体が途上国にとっての「信頼醸成のプロセス」としての意味を持つ、として不誠実な対応にクギを刺している。

一貫して大幅な削減目標に敵対してきた日本政府はここでも従来の姿勢を変えることはなかった。ボン現地にメンバーを派遣したNGOのネットワーク、気候ネットワークのメンバーが現地から伝える情報によると、日本政府の交渉姿勢を次のように批判している。

「日本は、自国の排出削減が進んでいない上、中期目標の議論では増加オプションを検討しており、そこに削減意欲を見ることはできない。また、途上国が必要とする緩和・適応のための資金援助に関する具体的考え方も示すことができていない。…(略)…これでは、途上国からは、責任を押し付けようとしていると反発が出ても仕方がない。実際、3日の緩和に関する会議では、日本が途上国の削減義務を求める発言をしたのに対してインドが『条約のどこに途上国の削減目標を設定する規定があるのか』と質問を投げかけた。これに対し「主要な排出国は皆、義務を負った責任ある行動をとらなければならない。あなたの国、インドも同様だ」と、挑発的ともとれる回答をしている。国内の排出を増やしながら途上国ばかりに執拗に義務的な削減を求める無配慮な交渉姿勢では、信頼関係の醸成はできないのではないか。」(Kiko AWGLCA5/AWGKP7通信No.1 2009年4月6日より抜粋)

◎会議場通信kiko(気候ネットワーク)
http://www.kikonet.org/theme/kiko.html

◆排出量削減ではなく増加!?NGOなどが一斉批判

特別作業部会開催直前の27日に東京で開催された政府の中期目標検討委員会(座長:福井俊彦・前日銀総裁)では、京都議定書目標であった温室効果ガスの排出量マイナス6%をかなぐり捨てるかのように、排出量4%増(!)をふくむ複数の選択肢を提示し、温暖化解決に取り組む各国政府、NGOを大いに失望させた。

◎地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会(第6回)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai06tyuuki/06gijisidai.html

厳しい上限規制を含む気候変動対策の政策提言を行ってきた気候ネットワークなどによる共同プレスリリースでは、世界各国の削減努力を台無しにする検討委員会の選択肢に対して「低炭素社会づくりへの意欲が全く見られない」「国際交渉の足を引っ張るもので、後ろ向きの提案」と厳しく批判している。

◎首相官邸の中期目標検討委員会のとりまとめに際し、環境NGOが一斉に批判(共同プレスリリース2009-3-27)
http://www.kikonet.org/iken/kokunai/2009-03-27.html

◎世界と日本のNGO400団体で組織する国際NGO「気候行動ネットワーク・インターナショナル(CAN)」から、3月27日の首相官邸の中期目標検討委員会に対して出した麻生首相への書簡
http://www.kikonet.org/iken/kokunai/archive/CANI_letter_jp0327.pdf

◆財界とエリートが支配する温暖化懇談会

日本政府は、中期目標検討委員会や地球温暖化問題に関する懇談会でさらに検討を進め、6月の特別作業部会までに結論を出すという。福井元日銀総裁が座長を務める中期目標検討委員会は、地球温暖化問題に関する懇談会の分科会の一つとして設置されている。地球温暖化問題に関する懇談会の座長は、トヨタ自動車の相談役で内閣特別顧問の奥田碩氏が務め、最大の排出産業であり、環境破壊施設の原発を多数保有する東京電力の勝俣恒久社長、日本製鉄の三村明夫社長、三井物産戦略研究所の寺島実郎所長などが名を連ねている。

◎地球温暖化問題に関する懇談会
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/index.html

NGOや気候変動の影響を受ける各国政府などが求める排出量の25~40%の削減について、中期目標検討委員会では、先進国一律25%削減を最も厳しい選択肢として提示している。もしそれを実現すると、経済成長に大きなマイナスになるだろうというくだらない予測を立てている。

・実質GDPは2020年までの累積でGDPが3.2~6.0%押下げられる。
・民間設備投資は2020年で-13~+11兆円になる。
・失業者が77~120万人増加し、失業率は1.3~1.9%増加する。
・世帯当たり可処分所得は2020年の所得を22~77万円押下げる。
・家庭の光熱費支出は世帯当たり年11~14万円増加する。

◎温室効果ガス排出量の中期目標の選択肢
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai06tyuuki/siryou1/1_1.pdf

◆資本主義こそ経済と環境にとってマイナスだ

だが、気候変動と同じく資本主義が引き起こした金融危機によって、懇談会の座長を務める奥田氏の出身企業であるトヨタ自動車をはじめ、自動車、製造業などでは多数の労働者が工場から街頭に投げ出された。公式統計だけでも19万人もの労働者の解雇が予想され(実際にはその何倍もの労働者が解雇されている)、161万8543人もの人々が生活保護を受給し、IMFは今年の日本の成長率をマイナス5.8%と予想し、それを克服するために麻生政権は追加経済対策として33兆円もの国債発行による景気対策をぶち上げ、さらなる消費を煽り(新車とマイホームの購入など、貧困層にはまったく関係のない金持ちと企業優遇の対策だ!)、労働者民衆と地球環境から収奪した富で金融機関と大企業を救済しようとしている。

4月から5月にかけて東京、名古屋、大阪、札幌、福岡の全国5箇所で「地球温暖化の中期目標に関する意見交換会」を開催し、6月までの中期目標を決定するという。だが中期目標検討委員会が示した目標は最大限の幅でも25%の削減でしかない。それは必要とされる削減幅の最低限の水準でしかない。資本家とその政府は、それすらも容認することはできない。環境と経済、雇用と生活の危機を引き起こし、そのツケはすべて労働者民衆や社会的弱者、そして自然環境に押し付けて逃げ切ろうとする資本主義にこの惑星の未来を任せることはできない。

搾取と戦争、抑圧や差別、そして家父長制と環境破壊のないもうひとつの世界を目指すすべての人々とともに、「温暖化対策による経済へのマイナス影響」などという強欲資本主義的イデオロギーの欺瞞を暴露し、企業に対する強力な規制および原発廃止を含む温暖化対策を政府に迫る取り組みをはじめなければならない。

(H)

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