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ラスト10分。物語が進むにつれ、力が体中から抜けていくのがわかった。映画を見てこんな感覚に襲われたのは、言葉のそのままの意味で原作を裏切ったアニメ映画『ゲド戦記』を観て以来のことだ。

現在公開中のアニメーション『動物農場』のことである。

映画『動物農場』公式サイト
http://www.ghibli-museum.jp/animal/


映画"Animal Farm"の一場面-動物たちの反乱
 
●ジョージ・オーウェルによる原作「動物農場」のストーリーはつぎのとおり。

過酷な奴隷状態にあった荘園農場の動物たちが、二匹の豚、スノーボールとナポレオンの指揮の下で農場主に反乱を起こして追い出し、自分達で農場を経営する。しかしずるがしこいナポレオンは、手下の犬をつかってスノーボールを追い出し、荘園を豚による支配体制をつくり上げていく。最後には敵であった人間たちの荘園と取り引きを行ない、結局、人間と変わらない支配体制が繰り返される、というロシア革命を簒奪したスターリニズムを風刺した寓話として終わる。

映画を見る前に原作を読んでみた。原作には、物語のあちこちにロシア革命とその後の悲劇の史実をモチーフにしたエピソードがちりばめられている。革命歌インターナショナル、計画経済、新経済政策、ゲペウー、スタハーノフ運動、独ソ不可侵条約、スターリン憲法などなど。ロシア革命が切り開いた階級闘争の歴史的な地平を引き継ごうと自負するものにとっては、頬を崩したり、眉をしかめたり、一人うなづきながら納得したりと、その分量の何倍もの思考を必要とする原作であった。

ロシア革命は、植民地争奪戦に明け暮れる資本主義システムの最高形態としての帝国主義の最も弱い環であるロシアにおいて最悪の帝国主義支配体制のひとつであったツァーリ体制を打倒し、歴史的な危機を迎えていた資本主義に代わって労働者階級という多数による支配、収奪者を収奪する民主的体制の基礎をつくることを可能にした。また、ロシアと同じく資本家の搾取と戦争にあえぐ他の帝国主義諸国の労働者革命と植民地支配を打ち破ろうとする民族独立運動を大きく鼓舞したこともロシア革命が世界史的な意義を持つといわれるゆえんである。 


しかし革命はスターリンを頂点とする官僚支配体制にその成果を簒奪されることになる。内戦による資源の欠乏と極度の統制経済、ヨーロッパ革命の挫折と大衆の保守化、代行主義と秘密警察、官僚機構を通じた人事支配など、スターリニズムと呼ばれる20世紀最大の革命のブレーキのひとつとなった独裁支配体制の芽が、革命ロシアのありとあらゆる反動の毛穴から、その全身を覆い尽くしていった。多くの古参革命家が、ありもしない罪で処刑されたり、国外追放になった。ソヴィエト民主主義という革命の力を根絶やしにした。官僚支配体制にとって、ソヴィエト民主主義や思想信条の自由は、自らの支配を脅かすものでしかなかったのだ。

スターリンは、ロシアにおける官僚支配体制を守るためだけに他国の革命を指導した。ソ連にとって必要以上の革命運動には弾圧を加えた。ドイツで、ブルガリアで、イギリスで、中国で、スペインで、インドで、世界中で、革命をもとめる労働者や農民、被抑圧民族などの闘争のブレーキとなり、時には直接の暗殺者となった。それはヨーロッパではナチスドイツの台頭を許し、スペインではフランコ独裁の勝利を導き、アジアでは日本帝国主義のアジア侵略を容易にした。スターリニズムによる世界革命の挫折は、所有せざる階級同志が所有する階級のために互いに殺しあう世界大戦に道を開いた。ソヴィエト連邦は、スターリン体制にもかかわらず、労働者国家の統一と団結によって、極めて多大な犠牲を払いつつもナチスドイツの侵略を退けることができた。

ジョージ・オーウェルの原作「動物農場」はこのようなロシア革命の実現とその挫折を、動物VS人間という寓話のなかでたくみに描き出した。いうまでもなく、人間=資本家階級、動物=労働者階級である。革命の成果を簒奪した独裁者とその一味の豚は、労働者階級に君臨するスターリニスト官僚である。

前置きが長くなった。

アニメ「動物農場」も、途中までは原作のストーリーにほぼ忠実に作られている。もちろん細かいエピソードなどは省かれているものが多いのだが、それはあまり重要ではない。最大の問題は、動物たちが打倒の対象とした支配者の人間が、ラストではほとんど「敵」として登場しなくなることだ。

原作「動物農場」では、動物農場をはさんで二つの人間の農場があり、豚はそのどちらかと取り引きをすることで、動物農場における自らの支配を維持したり、またラストシーンでは豚たちが人間の農場主といっしょになってパーティーを開き、豚も人間も同じに見えてしまう、というエピソードで終了するということで、人間のずる賢さと豚も同じになってしまう、という風刺で終わる。

しかしアニメ「動物農場」では、豚の悪役ぶりがラストになるにつれてどんどん強調される一方、人間の存在はほとんど物語の重要性とは関係なくなっていく。もちろん物語の途中には、人間達が何度か農場を奪い返そうと襲撃してきたり、また豚に取り入って上手に商売をする人間もでてくる。しかし、原作では豚も結局人間と同じになっていくことが強調されるのだが、アニメでは、単に悪い独裁者になっていく、という程度の描き方なのである。そして原作にはないラストシーンで、豚たちは他の動物たちに打倒されて終わる。そこに人間はまったく出てこない。

原作「動物農場」はスターリニズム支配体制を風刺した寓話である。スターリニズムの最大の問題点は、資本主義を打倒した社会における政治・経済・文化のいっそうの発展を阻害し、その結果、死の苦悶にあえぐ資本主義体制を守る役割を果たしてきた、ということにある。だがアニメ「動物農場」のラストシーンでは、人間=資本家や資本主義への批判もなく、あるのは豚=スターリン体制への批判のみである。

有料パンフにはこうある。「原作をほぼ忠実にアニメーション化しているが、ラストシーンだけが改変されており、評論家の間では賛否が分かれた問題作であるが(以下略)」

原作者ジョージ・オーウェルは、1936年から37年にかけて、スペイン内戦に国際義勇軍として参加している。そこでファシズムの犯罪性とともに、援軍であったスターリニズムの犯罪性をも体験している。詳しくはスペイン内戦のルポ『カタロニア賛歌』などを見てもらいたいが、スペイン内戦においてスターリニズムが果たした役割は、内戦から社会主義革命へと向かおうとする労働者農民の力を押しつぶし、「民主的」な資本家階級を巻き込んだ人民戦線の連合政府の建設を最優先させた。

このとき、スターリンは、ナチスドイツの脅威に対してイギリス帝国主義と結ぶことで対抗しようとしていた。だからイギリスにおける炭鉱ストライキに対しては早期終結の指示を出したし、社会主義革命がこれ以上進展しないようにスペインでは土地の共有化などの要求を退け、徹底した階級協調路線を堅持した。すべてはソ連の官僚支配体制をファシズムから守るための政策だった。逆らうものは「トロツキスト」、「ファシストのスパイ」などとして容赦なく弾圧された。正面のファシストから、背後のスターリニストからの銃弾に怯えながら、どうしてファシストとの戦争に勝利することができるだろうか。スペイン革命はファシスト・フランコの勝利に終わった。

ファシズムの脅威に対抗するには、スペインにおける社会主義革命こそが、中国における社会主義革命こそが、そしてなによりソ連におけるスターリニズム支配打倒=政治革命こそが、最良の近道であったのだ。スターリニズムはその道を遮断した。スペインの、中国の、ソ連の労働者民衆は、多大な犠牲を払って回り道を歩まなければならなかった。

第二次大戦後の東欧諸国をはじめスターリニズム支配にあえぐ各国で、官僚制打倒のたたかいが相次いだ。たくさんの希望がソ連の戦車と銃剣によって押しつぶされた。それでも民主的な政治・経済体制を求める声は80年代まで続いた。しかし民主的な政治・経済体制をもとめる社会主義に向けた希望は、腐敗に腐敗を重ねたスターリニズム支配によって徹底的に抹殺された。独裁と弾圧と官僚腐敗と「社会主義」が等号で結び付けられた。

スターリニズム支配体制は一九九〇年代に雪崩を打って崩壊した。自由と民主主義から切り離された旧支配体制と「社会主義」が等号で結びついた人々は資本主義を選択した。しかしその後にもたらされた社会は自由でも民主的もない社会だった。資本旧社会主義圏では、独裁と搾取が蔓延し、ソ連邦という巨大な阻害物がなくなった世界市場を、カジノ資本主義と新たな戦争が覆うようになった。

世界の労働者民衆はいまだ回り道を進み続けている。だが歴史は繰り返さない。危機に瀕する資本主義体制に希望あるフィナーレをもたらすことができるのは労働者階級のたたかいのみである。

問題のあるアニメ版「動物農場」ではあるが、この映画のおかげで原作「動物農場」を初めて読んだわけだし、本棚の奥にあった『世界革命1917~1936コミンテルンの台頭と没落』『カタロニア賛歌』『スペインの革命と反革命』『国際共産主義運動史』『ロシアの革命』『第四インターナショナル小史』『1917年10月――クーデターか社会革命か』『官僚論・疎外論』『トロツキー わが生涯』などを引っ張り出しあれこれ斜め読みをしたり考えたりすることもできた。また実践の中で組織問題と格闘する真摯な活動家の貴重な意見を聞く機会も得た。スクリーンや書物からだけでは得ることのできない、時代を生きてきた労働者階級の経験と結びつけてくれたことに感謝すべきだろう。

動物農場で、ロシアで、スペインで、中国で、日本で、そして世界中で社会変革をもとめる動物たちが流してきた血と涙を思い起こしたひと時であった。

※現代書館のFor beginnersシリーズ『トロツキー』は、ロシア革命からスターリニズムの問題までをマンガで学ぶことのできる好著だが、残念なことに現在は絶版。図書館か古本屋で探そう。

(H.H)

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