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2006年10月24日、神奈川県警公安三課は、Aさんを免状等不実記載罪(運転免許証に記載されている住所〈実家〉と現住所が違っていた)で不当逮捕し、10日間の勾留と人権侵害の取り調べを行った。また、Aさん宅と実家、越境社と新時代社、関西新時代社を家宅捜索した。不当弾圧を受けた仲間たちは国賠裁判に勝利する会を結成し、逮捕・家宅捜索令状を発布した裁判所の国と神奈川県(県警公安三課)を相手に国家賠償請求を横浜地方裁判所民事部に起こし(06年12月25日)、この日の判決公判を迎えた。
08年12月16日、10・24免状等不実記載弾圧を許さない!国家賠償請求裁判で横浜地裁第6民事部(三代川俊一郎裁判長)は、被告神奈川県に対して原告Aさんに金33万円、原告越境社に金11万円、原告関西新時代社に金11万円を支払えという判決を言い渡した。「微罪弾圧」を通した公安警察の人権侵害を批判する画期的な勝利判決である。原告団と支援のスクラムの結果だ。
しかし、厳密に言えば「半分勝利」の判決だったことを確認しなければならない。つまり、10・24弾圧を強行するために県警公安三課は、横浜地裁にAさんの逮捕令状、各家宅捜索令状を請求理由書付で請求。横浜地方裁判所は、各令状請求内容を違法捜査の危険性、人権侵害の観点から点検を全くせずに各令状を発付した。原告団は、このような国=裁判所の令状乱発主義、請求理由をなんらチェックしないでハンコを押し続け、マシーン化してしまっている現実を許さないという位置づけも含めて国賠を起こした。ところが地裁は、10・24弾圧各令状発布の自らの責任についてはメスを入れることはせず、「違法性はなかった」と結論付けた。
県は、判決を不服として12月24日、東京高裁に控訴した。自らの犯罪を直視し反省するのではなく、原告はもちろんのこと社会的に謝罪をすることもなく、控訴を強行したことを徹底的に糾弾する。全ての仲間たちに訴える。県の居直り態度を許さず控訴審闘争の勝利をかちとっていこう。そのためにも国賠裁判の経過、判決に対する評価、チェックをともに行っていこう。
県の作文は「論理の飛躍があり、無理がある」(判決)と規定
判決は、公安警察のでっち上げ逮捕のストーリーをことごとく否定した。以下、ポイントを列挙する。
県警は、警察庁のグローバル派兵大国建設にむけた治安弾圧体制強化の指示のもとに日本革命的共産主義者同盟(JRCL)・日本共産青年同盟(JCY)、アジア連帯講座と友人たちへの弾圧を設定し、「武装闘争路線の一環として、組織活動を推進する目的のために行われた、組織的、計画的な犯罪だ」(県準備書面)とでっち上げ、
10・24免状等不実記載弾圧作戦を強行したのである。ところがでっち上げの根拠は、「組織的、計画的な犯罪」についてがJRCLとJCYの規約、Aさんのライフスタイルが「非公然の過激派活動家」だと決め付け「罪証湮滅、逃亡のおそれ」があったため強制捜査・逮捕が必要だったという荒唐無稽のストーリーであり、とんでもない稚拙な内容だった。
判決は、第一に「被告県が主張するような組織性があるとの疑いは、根拠がないというべきである。また、その機関紙において、過去の暴力主義的破壊活動について否定していないことが直ちに組織として暴力主義的集団としての性質を維持していることと結びつくものとはいえないし、規約の前文文言については、組織原則として決定機関の定め及び同盟員ないし組織の拘束性を規定しているものであり、『それ以外の行動』という中に個々の同盟員や委員が真実の住所を偽るといった行動が含まれていると解釈することには論理の飛躍があり、無理があるというべきであろう」と判断し、県の組織背景論を否定した。そのうえで越境社、関西新時代社への不当な家宅捜索を批判したのである。
この規定をもとに地裁は、「明らかに逮捕の必要性がなかった」と断定し、さらにAさんが「新時代社に十年以上ほぼ毎日通勤していた」「ことさらに自己の身分を秘匿する等の目的を有していたとはうかがわれない」「住民票上の住所を実家のままにしておく例や転居後も住所変更の届出をしないでいる例は世上よくみられることなどを考え合わせると、本件更新の実質は、住民票上、本来の住所の変更手続きをしていないことに端を発したものであり、前記犯行態様が悪質なものであったといえない」と認定したのである。
ただし原告の「道路交通法上、『住所』はその複数の存在が許容されるものである」 という住所複数説論の主張をなぜ否定したのかという矛盾が発生しているのだが、この根拠説明について不十分であることを強調しておく。
いずれにしても地裁は、原告が繰り返し主張してきた県警公安政治警察の「微罪弾圧」を通した憲法違反・人権侵害という犯罪行為に対して、「原告Aに逃亡及び罪証隠滅のおそれがあると判断したことには合理的根拠がなかったというべきである」と述べるとともに、「神奈川県警が本件逮捕状を請求したことについて少なくとも過失が認められるというべきである」と批判し、「国賠法1条1項の要件としての違法性を備えるものというべきである」と結論づけたのである。
地裁の令状乱発主義は免罪
第二のポイントは、国=横浜地裁が公安警察による「微罪弾圧」のための各種令状請求に対して、機械的に令状発付を繰り返してきたが、本件においても同様の対応をしたことである。当然、原告は国の令状乱発主義に対して、「逮捕状請求を受けた裁判官は、捜査機関から提出された資料を吟味するにあたって、被疑者の人権に対する配慮という刑事司法の根幹である令状主義の目的を踏まえた上で、被疑事実の有無、その軽重、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれなどについて慎重に判断しなければならず、そのような慎重な検討をせずに安易に逮捕状を発付すれば、それは『裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使した』場合に該当するというべきである」と厳しく批判してきた。
ところが判決は、「裁判官による令状の発付について」の違法が成立することに関して「当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判したなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを必要とする」のであり、かつ「事実認定については令状裁判官の自由心証に委ねられ、令状裁判官に幅広い裁量が与えられていること、法律の解釈適用については唯一の正しい解釈というものが存在せず、令状裁判官による選択という要素が含まれるという裁判制度の特質という点においても争訟の裁判と同質のものであるということができる」とされた。
そして、「その令状の発付が国賠法上も違法となるものではなく、裁判官による令状の発付が国賠法上違法と評価されるためには、法が裁判官に対してその職務の執行及び権限の行使について遵守すべきことを要求している行為規範に違反して令状の発付が行われたことが必要であると解すべきである。」と再度強く押し出し、本件の場合はそれにあてはまらないと結論付けた。
さらに「各令状請求を受けた裁判官が、その時点で提出されていた限られた資料からは、神奈川県警が強制捜査の必要性の主たる根拠としたJRCLの組織としての性格や本件被疑事件の組織的背景の解明の必要性について、明らかに逮捕及び捜索差押えの必要がないと判断することや神奈川県警が本件各令状を利用してJRCLについての情報収集を行う目的を有していたことを推し量ることには困難な面もあったことなどの事情も考慮すると、本件令状裁判官による本件各令状の発付について、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認められるような特別の事情があると認めることはできない」として「原告らの被告国に対する請求及び被告神奈川県に対するその余の請求をいずれも棄却する」という態度を選択したのである。
要するに県警公安の杜撰な逮捕状請求に対して、違法捜査の危険性、人権侵害の観点から全く点検せずに各令状を発付してきた責任について追及することはしなかった。
高裁での勝利判決を
最後に、すでに10・24免状等不実記載弾圧を許さない!国賠裁判に勝利する会は、判決後、神奈川県知事の松沢成文と神奈川県警察本部長の田端智明に対して「控訴をするな」の申し入れ書を送り、控訴取り下げキャンペーンを開始している。一審を上回る取り組みを展開していこう。12・16勝利判決を社会的に伝え、高裁での勝利判決を実現しよう。公安警察と「微罪弾圧」攻撃を解体していこう。継続した支援と裁判支援カンパを行っていこう。
(遠山裕樹)
●裁判カンパ送り先 郵便振替口座 00290-6-64430 新時代社(かならず裁判カンパと明記してください)