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日本と中国、台湾とのあいだで帰属をめぐり摩擦が続いている釣魚島(日本名:尖閣諸島)付近で、中国の漁船が日本の海上保安庁の巡視船に拿捕され、船長が「公務執行妨害」で逮捕、送検されるという事件が発生した。この海域で中国漁船の船長が逮捕され送検されるのは初めてのことである。

■ 「転び公妨」ならぬ「当たり公妨」で過激化する領海警備

20100907.jpg
石垣港に連行され係留される中国トロール船(右)と巡視船
「よなぐに」。およそ10倍もの規模の違いがある。


送検容疑は、尖閣諸島の久場島(中国名:黄尾嶼)から北西約15キロの日本領海内で、漁船のかじを左に大きく切り、追跡してきた海保の巡視船「みずき」に船体を衝突させるなどして、海上保安官の職務執行を妨害した疑いだという。日本のメディアは、海保の「船体を衝突させるなど」という情報を垂れ流し、あたかも中国漁船の「攻撃性」を演出しようとしてる。しかしこの間の海上保安庁による「過剰警備」の実態には触れようとはしない。海上保安庁は2008年にも釣魚島沖で台湾船に衝突させて「撃沈」している。

「領海侵犯してきた不審船を拿捕するのは当然ではないか!」と絶叫する前に、
海上保安庁自身の「尖閣諸島」に対する警備方針を確認しよう。

「同諸島周辺海域では、中国漁船、台湾漁船が多数操業しており、同諸島領海内において、不法操業を行い又は漂泊・徘徊等の不審な行動をとった場合には、巡視船により厳重に警告の上、領海外に退去させることとしている。」

この「警告」「退去」という警戒方針は、日本と中国・台湾との間で、未解決の領海であることを前提としたものとしては、各国の間でも暗黙の了解として受け入れられてきたと考えてもいいだろう。

日本での報道では、中国の漁船が船体を衝突させるなどの「公務執行妨害」の容疑とされている。だが、どれだけ中国の経済力が目を見張るものがあるとしても、一介の漁船が、その10倍もの規模の海上保安庁の巡視船に対して、進んで体当たりをするだろうか。それは乗用車で戦車に突撃するようなものである。そのような妄想よりも、上記の「警戒方針」に反して、「拿捕」するために海上保安庁の複数の巡視船が中国の漁船を挟み込み、その結果として衝突が発生したと考えるのが普通だろう。「転び公妨」(警察がわざと転んで公務執行で逮捕すること)ならぬ「当たり公妨」である。

海上保安庁のこのような過激化する警備の背景には、東アジアのみならず世界全域で政治や経済において急速に影響力を増す中国に対する狭隘かつ反動的な民族排外主義の社会的蔓延がある。とりわけ天然資源の開発において従来より摩擦の耐えなかったこの海域の「領土」をめぐる争いは今後もことあるごとに浮上するだろう。

日本政府は1978年に「日本青年社」が釣魚島に建てた灯台を2005年に国有化するという右翼との連係プレーで「尖閣諸島領有化」を正当化していることなどからも、今後の動向には注目しなければならない。とりわけ民主党代表選挙期間中のいま、小沢と菅が今回の事件に対する「強腰姿勢」をアピールすることで「リーダーシップ」を発揮できるという錯覚に陥らせないための世論喚起が必要である。

■ 釣魚諸島は帝国主義侵略戦争によって強奪された

日中双方の政府、メディア、民間世論は一斉に「古くからの領土」「歴史的に固有の領土」など騒ぎ立てている。だが、労働者に祖国などないのと同じように、歴史的に固有な領土など存在はしない。国家は階級支配の道具である。釣魚島の歴史は、日本が近代ブルジョア国家から帝国主義へと進むなかで、琉球(沖縄)に対する侵略支配の確立、そして台湾、朝鮮半島、中国大陸への侵略の一環として、何ら国際法的な根拠もないまま日本帝国主義によって強奪された領土であることを、日本の労働者民衆は何度でも確認しなければならない。

台湾と澎湖諸島は下関条約第二条によって日本が略奪した。ところが釣魚諸島は、どんな条約にもよらず、戦争に勝利したドサクサまぎれに盗み取ったものである。日本政府は、日清戦争で日本の勝利が確実になった1894年末になって、内務省から外務省あての秘密文書(12月27日付け)で、釣魚諸島を沖縄県所轄として国標を建てることについて閣議決定することを申し入れ、翌1895年1月14日に閣議決定が行われた。この閣議決定は非公開で、公開されたのは50年以上も後の1950年になってからである。

ここに紹介する論文は、日本帝国主義による釣魚島簒奪の近代史を分かりやすく解説し、侵略した歴史を持つ労働者民衆が国際主義を貫徹するためには何が重要かを述べている。

釣魚諸島(尖閣諸島)は中国領である(かけはし2004年4月5日号)
 新自由主義グローバル化と対決する国際連帯のために
 「領土問題」の認識が問われている
 
この論文からも明らかなように、「日本固有の領土」などといわれているこの海域は、日清戦争という侵略戦争における勝利の後でさえ対外的には明らかにすることができないほどのものだったのである。このような歴史を知ってか知らずか、民主党の小沢は「(尖閣諸島は)歴史上、中国の領土になったことは一度もない」と公言してはばからない。

■ 沖縄民衆のたたかいを踏みにじるな

現在、米軍基地の移設反対を打ち出してたたかわれている沖縄・名護市議会選挙は、日本帝国主義による沖縄支配の歴史における現代的な反撃のたたかいでもある。右派の論客は「沖縄から米軍基地をなくしたら、尖閣諸島が中国に略奪される」などという妄言を殺し文句にしている。百年前の侵略で獲得した領土をアメリカ軍に守ってもらおうなどという主張は極めていびつである。またそれは沖縄人民の「基地はいらない」というたたかいを踏みにじるものでしかない。このような批判は、沖縄民衆のたたかいに寄り添いつづけている社民党、共産党の堅持する「尖閣日本帰属論」にも向けられるべきものである。労働者民衆を国境で分断する「領土主義」は戦争への道でしかない。このことを確認することは、今後の反基地運動の一つの核心である。

■ 労働者人民の国際連帯のために

いま、釣魚島(尖閣諸島)における侵略の歴史を強調することは極めて重要である。それは連帯と希望にみちた東アジアを作り出す労働者民衆の国際主義に関わることだからだ。前述の「かけはし」論文の結論部分を紹介する。

==(以下、引用)==

多国籍資本の新自由主義グローバリゼーションと対決する労働者人民の闘いにとって、ブルジョア民族主義は極めて有害である。国境を超えて自由に支配し、搾取し、収奪する多国籍資本と有効に闘うためには、労働者人民こそ国境を超えてインターナショナルな連帯を作り出さなければならない。日本と中国の多国籍資本も、国境を超えて日中の労働者を支配し、「底辺への競争」に駆り立てている。民族主義的対立は、多国籍資本とその政治体制を利するだけである。

 だからこそ、ブルジョア民族主義は反動的だという理由で、この釣魚諸島をめぐる対立に超然としていることはできない。侵略した側である日本の労働者人民が、日本帝国主義の侵略と不法な占領をあたかも当然であるかのように認めているようでは、侵略された側である中国労働者人民とのインターナショナルな連帯など作れるはずがないからだ。そのような態度は、中国労働者人民をますますブルジョア民族主義の側に追いやるだろう。

==(以上、引用)==

9月7日には中国・深センの工業団地に進出しているブラザー工業の現地工場である兄弟工業(深セン)有限公司で、賃金抑制や労働条件の一方的変更に不満を持つ労働者らがストライキでたたかっている。資本のグローバル化に対抗する労働者のグローバルな連帯―――国際主義を貫徹することが重要である。

20100907_02.jpg
深センのブラザー工業の工場でストライキに突入する
労働者たち(9月7日)


日本政府は逮捕した船長を釈放せよ! 漁業労働者の安全を脅かすな!
侵略の歴史と資源争奪の海を、労働者民衆の国際主義で埋め尽くそう!
領土主義反対! 普天間基地を即時撤去せよ!
名護・高江の米軍基地建設をやめろ!日米安保はいらない!
東アジアとアメリカの労働者民衆とともに日米軍事同盟を葬り去ろう。

2010年9月10日 (HF)

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