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自衛隊は女性自衛官に対する性暴力の事実を認め謝罪せよ!
女性自衛官への組織的嫌がらせをすぐにやめろ!
一月二十四日、アジア女性資料センターと女性自衛官の人権裁判を支援する会は、渋谷で「札幌・女性自衛官人権裁判 東京報告集会」を行い、五十人が参加した。
「女性自衛官の人権裁判」とは、北海道の航空自衛隊通信基地に所属する女性自衛官が、男性自衛官Aから受けた強かん未遂事件と、その後の上司たちから繰り返し退職強要が行われたことの抗議として国を相手に国家賠償訴訟を起こした裁判のことである(07年5月8日)。
事件の概要は、こうだ。二〇〇六年九月九日午前二時半、原告は、泥酔のAから宿舎の三階事務室に呼び出され、「夜中に呼び出さないで欲しい」と言うために入室した。Aはドアに鍵をかけ照明を消し、暴行・強かん未遂を強行した。
事件発生直後,原告は部隊上司に被害を訴え病院への診察を求めたが、上司を含む複数の男性隊員の同行を条件にしたので原告はそれを拒んだ。その後、上司は、深夜に無断で犯行現場(ボイラー室)に行ったとし、あるいは飲酒をした疑いがあるとして原告を懲戒処分の対象として取り調べたり、外出制限などの不利益、いやがらせを繰り返した。上司たちは、原告に対して「お前は被害者だと思っているかもしれないが、お前は加害者だ」「お前は問題を起こしたから外出させない」「Aは男だ。お前は女だ、どっちを残すかといったら男だ」などと恫喝し、退職を強要するまでにエスカレートしていった。また、Aを事件後九カ月にわたって異動させることもなく同職場に勤務させていた。
このような不当な圧力に抗して原告は、精神的に辛い状況に追い込まれたが、弁護士に相談し、退職の強要を許さず、国賠訴訟を取り組んでいくことを決めたのである。
原告は、〈1〉犯人Aによる原告への暴行・強かん未遂行為は勤務時間内の行為である〈2〉上司たちによる退職強要・嫌がらせが、自衛隊の指揮・服務指導を名目にして行われた〈3〉人権や尊厳が著しく踏みにじられたことの責任が国にあることを明確にさせ、「自衛隊には、事実を確認して、一刻も早く私の働く環境を整備することを強く要望」(原告のメッセージから)している。
弁護団(81人)の主任は、イラク派兵差止め北海道を取り組む佐藤博文弁護士で、「彼女の事件は、イラク戦争を契機に日本が本格的な戦争国家へ変貌しようとするいま、必然的に生起した『兵士の人権』問題」(『軍縮』07・10/佐藤論文)という観点から弁護活動を開始した。
また、イラク派兵差止め訴訟に参加している七尾寿子さんたちは、「女性自衛官の人権裁判を支援する会」(共同代表:影山あさ子、清水和恵、竹村泰子)を立ち上げ、 「暴行・わいせつ行為の被害者として提訴した女性自衛官への組織的嫌がらせをすぐにやめて下さい」という要求を柱に
〈1〉自衛隊は女性自衛官に対する性暴力の事実を認め謝罪すること
〈2〉加害者と上司を厳正に処分し、女性自衛官の勤務環境、生活環境を抜本的に改善すること
〈3〉自衛隊におけるセクハラ被害の実態を調査し、その結果を自衛隊員と国民に公表し、徹底した隊員教育と防止対策を行うこと
を求める署名運動を取り組んでいる。
会のブログは、
〈http://jinken07.10.dtiblog.com/〉
なお〇七年十二月二十七日、札幌地検は、空自千歳地方警務隊が強制わいせつ容疑で書類送検した男性自衛官を「証拠不十分により不起訴」と不当な決定を下している。
原告は性暴力事件について上司に報告したが、なんの措置もとられず、警務隊にいたっ ては、自衛隊防衛のための保身的サボタージュを続け、事件から半年もたった〇七年二月二十七日に原告の被害届を受理し、ようやく捜査を開始したほどだった。
しかし、当初から「この事件が強制猥褻であって、強姦未遂ではない」(会の声明から)という判断のうえで「性暴力被害者当事者の声や気持ちに注意を払うことなく、 加害者側の言い分を一方的に取り上げた大変偏った判断であった」(同)。事件の検察官送致も原告が国賠訴訟の提起後の五月末だったことが明らかになっている。札幌地検は、このような警務隊の事件隠蔽策動といいかげんな捜査を認めたのである。原告と弁護団は、検察審査会に不服申し立てをおこなっている。
国賠裁判において国は、重大な人権侵害があったことを認めず、居直り続けている。 国は、自衛隊員は「精強さ」と「規律保持」が求められ、隊員個人の人権を否定するというとんでもない論理を強調したうえで、事件は「私的な行為」であり、「Aの職務行為との密接な関連性は全くないことは明らかである」などと開き直るほどだ。つまりセクハラ・性犯罪があっても自衛隊の責任はなく、被害者と加害者の当事者間で解決すればいいのだと言いたいのだろう。まさに改正均等法とセクハラ防止法の否定だ。国の暴論を許してはならない。
家父長制と女性差別に貫かれた軍隊
集会は、冒頭、会の共同代表である影山さんがインタビュアーとして参加している「アメリカ│戦争する国の人びと」が上映された。イラク戦争で出兵し戦死した親たちの怒りの証言、帰還兵たちの証言、イラク派遣を拒否した最初の将校、アーレン・ワタダ中尉の証言などのシーンを次々と映し出し、「殺人マシーン」作りの軍隊の本質を暴き出した。
佐藤弁護士は、事件の概要と裁判経過を説明し、「自衛隊は厳格な上命下服社会であり、公私の区別もないこと、数的に圧倒的な男性社会である。女性を大量に採用しているが、家族・地域から隔絶した『密室』の中に置かれ、本件のように人間として女性としての尊厳が無視され、侵害されやすい社会のままだ。この通信基地は百八十人の隊員のうち女性は五人だけで、しかも宿舎は相部屋生活だった。施設や『セクハラ対策』が自衛隊では遅れているという問題にとどまらないところに本件事件の本質がある」と問題提起した。
さらに入隊時、「躾」というタイトルのパンフにもとづいて自衛隊員の私生活、プライバシーまで踏み込んだ規律徹底教育が行われていることや、若者層の自衛隊員を対象にしたパンフレットが家父長制と女性差別に貫かれた内容であり、「軍隊の論理」 による人権否定が温存、再生産していく構造が続いていることを批判し、あらためて原告の人権を守るために闘う決意を表明した。
会の七尾さんは、原告との出会いと交流、裁判の取り組みを報告した。そして、国、 自衛隊が原告に対する人権侵害をいまだに認めず、居直り続けていることを厳しく糾弾した。
最後に、署名運動への協力、第五回口頭弁論への傍聴(二月七日〈木〉午後三時半/札幌地方裁判所8F第5法廷)、二十五日の防衛省申し入れ行動と国会院内集会への参加が呼びかけられた。
また、インパクション一六一号で「特集 軍隊と人権 軍隊と金権」で会のメンバー が参加した座談会「私たちはなぜ女性自衛官を支えるのか」が掲載されていることが紹介された。(Y)