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09年5月、裁判員制度実施反対!
憲法違反に満ちた制度の導入を許してはならない!
 



 政府は、グローバル派兵大国建設の一環である新自由主義的統治強化にむけて、「現代の赤紙」を市民に送りつけ裁判員を強要する裁判員制度(以下、制度)の実施を09年5月から強行しようとしている。国民総動員を通した制度の実施強行を許してはならない。


 強引な制度実施に抗して、ついに公然たる反旗が揚がった。新潟県弁護士会は、2月29日の総会で制度実施の延期を求める決議を会員41人が賛同する形で提案され、賛成多数で可決した。

 決議文は「世論調査でも八割が『裁判員になりたくない』と答えており、民主的討議を経ないまま制度が導入された」と指摘し、裁判員法を拙速な論議で決めてしまったことを批判した。さらに制度が 判決の誤りや冤(えん)罪を生み出す危険性、重罰化の流れへの加担であり、「国民に重大な義務と負担を課す制度であって、民主的な討議を経た上で国民の納得を得るべきだ」と強調し、「裁判員法の施行を数年間、延期した上で、広く国民から意見を聞き、同法の抜本的改正を図るべきだ」と結論づけた。

 これまで制度実施延期を求める決議案は仙台、埼玉の弁護士会でも議論されたが、否決されている。新潟県弁護士会の決議採択は全国の弁護士会で初めてであり、制度実施反対運動にとって大きなバネとなる。

 さらに超党派の国会議員でつくる「死刑廃止を推進する議員連盟」(会長・亀井静香衆院議員)は、死刑判決の場合に限って全員一致を条件とすることを柱とする裁判員法改正案を作成する方針を明らかにしている。

 すでに最高裁判所・法務省・日本弁護士連合会が一体となった「市民が参加する裁判員制度」などと実態を歪曲したポスターが全国各地に張りまくっている。東京地裁では制度導入にむけて「IT法廷が完成、模擬裁判」にマスコミを動員して一斉報道させた。裁判員に事件の概要や争点を分かりやすく説明する必要があることを理由に、 IT法廷と称して「ビジュアル型立証」のために大型ディスプレー、裁判員用に小型モニターを設置するというのだ。

 新潟県弁護士会決議が的確に制度の危険性を批判しているが、最高裁判所・法務省・ 日本弁護士連合会による推進キャンペーンには、制度の危険性の未提示、拙速な論議で決めてしまったことなどの反省の姿勢が全く欠落している。

 このような制度推進に反対して、07年4月に「裁判員制度はいらない!大運動」がスタートしている。大運動の呼びかけ人は、足立昌勝(関東学院大学教授・刑事法)、嵐山光三郎(作家)、今井亮一(交通ジャーナリスト) 、蛭子能収(漫画家)、織田信夫(弁護士) 、崔 洋一(映画監督) 、斎藤貴男(ジャーナリスト)、新藤宗幸(千葉大学教授・行政学) 、高山俊吉(弁護士)、西野瑠美子(ルポライター)、山口 孝(明治大学教授・経営学)たちが名を連ねている。大運動の詳細は、ホームページをチェックしていただきたい。http://no-saiban-in.org/629syukai01.html

 大運動は、6月13日(金)日比谷公会堂で全国集会を開催する予定だ。制度実施反対運動を取り組んでいこう。

 入門書「裁判員制度の正体」( 西野喜一/講談社現代新書)の紹介

 制度実施にむけてカウントダウンが始まっているが、制度のひどい中味を知っている方は、どれだけいるのだろうか。反対運動を取り組むにしても、制度の実態と欠陥、 憲法違反などの問題点を把握しておく必要がある。反対派の文献は、多数あるのだが、「裁判員制度はいらない!大運動」HPの書籍欄で諸文献が紹介されている。

 この中で『裁判員制度の正体』( 西野喜一/講談社現代新書)は、シャープな切り口で、わかりやすく批判を展開している。おまけに著者の西野は、裁判官の経験と研究活動の蓄積から「『現代の赤紙』から逃れるには」などと「不服従」とそのためのマニュアルまで書いてしまった。学習テキストとして薦める。

 本書は、こうだ。第1章 裁判員制度とはどのようなものなのか 第2章 裁判員制度はどのようにしてできたのか 第3章 無用な制度 第4章 違法な制度│憲法軽視の恐怖 第5章 粗雑な制度 粗雑司法の発想 第6章 不安な制度 真相究明は不可能に 第7章 過酷な制度 犯罪被害者へのダブルパンチ 第8章 迷惑な制度 裁判員になるとこんなに目に遭う! 第9章 この「現代の赤紙」から逃れるには 国民の立場から 終章 いま、本当に考えるべきこと││という構成だ。

 このように各章のタイトルを見ただけで、興味を誘う。西野の結論は、はっきりしている。裁判員制度は、「国民はもっと国のために奉仕すべきだという思想」であり、つまり「徴兵制」「国民総動員の発想」だと厳しく批判する。さらに、「実施は、憲法改正への地ならし」であり、「憲法18条(意に反する苦役に服させられない)、13条(国民の幸福追求権を侵害)」違反は明らかだと断定する。だから 裁判所からの呼出状は、「召集令状」としての現代版「赤紙」だから「受け取り」を拒否すればいいのだとフォローしてくれる。

 制度から逃れるための手ほどきこれだけではない。質問票を受け取ったら 拒否と書いて返送せよ/疾病・介護・養育・事業上都合・葬式などの理由で欠席できる/「難儀な」人を装う等々だ。

 結局、制度は、「一審がまったく当てにならなくなる結果、高裁が実質的に一審の役割を引き受けざるをえなくなる」「手抜き審理になる可能性大 司法そのものが国民に愛想をつかされる」に違いなと結んでいる。

 ところで著者の西野への注文だが、新自由主義的統治弾圧機関の強化、制度導入の背景などについてもっと展開してほしかった。さらに、検察、警察の要求どおり裁判官は、まともな審査をすることもなく、家宅捜索や逮捕勾留令状の乱発を繰り返している現状を見つめ、批判するべきだった。もちろん代用監獄制度、人権無視の不当な強制捜査と取り調べもそうだ。つまり、現行の裁判制度、司法行政の批判がもっと必要だったのではないかと読後、若干思った。いずれにしても制度を批判的に検証するための基礎的テキストとして読んでおくべき一冊である。(Y)

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