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2010国勢調査大幅見直し、なお課題残る
国家による個人情報の管理反対


 国は五年に一度国勢調査を行っているが、今年は十年に一度の大規模調査になる。調査の目的を「国内の人及び世帯の実態を把握し、各種行政施策その他の基礎資料を得る」としている。期日は十月一日である。対象は、わが国に常住するすべての人及び世帯(約1億2700万人、約5000万世帯。3カ月滞在する人)。つまり、住民票に登録していない人たちも調査対象とすることとしている。

 調査事項は、世帯員に関する事項など十五項目、世帯に関する事項など五項目。方法は、国勢調査員が世帯員と面接し、記入説明を行った上で調査票を配布。調査員(封入提出方式)または郵送(モデル地域ではインターネットも)による回収。調査票未提出世帯からの回収について、所定の期間内に調査票が提出されていない世帯については、調査員が当該世帯を訪問して調査票を回収する。

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▲1920年の第一回国勢調査の記念はがき。
樺太・千島列島・朝鮮・台湾まで実施されていたことがうかがえる。


 調査結果を何に使うのか。1, 法定人口としての利用。衆議院小選挙区の画定基準、衆議院の比例代表区の議員定数の改定基準、地方交付税の算定基準、過疎地域自立促進に係る地域の要件等 2, 行政施策の基礎資料 3, 学術、教育、企業など広範な分野での利用などとしている。

何が問題か

 国勢調査に対する反対運動は一九六〇年頃から始まった。一九七五年調査から反対運動は本格化し、当時の自治労、全電通、電気労連を中心にした「国民総背番号制に反対し、プライバシーを守る中央会議」と「見直す会」など市民グループが全国でのチラシ配布と電話相談を行い、マスコミも毎回大きくこの問題を取り上げた。一九七〇年の「結婚年数、出生状態」調査項目は反対により、一九七五年以降の調査項目からはずされた。

 一九七〇年代に設立し、長年にわたり国勢調査の問題を明らかにしてきた国勢調査の見直しを求める会(共同代表、山本勝美・白石孝)は前回(2005年)の調査の時、次のような抜本改正の見解を出している。

 1, 人口調査は必要だが、現行の国勢調査によらなくとも可能である。政府は、専門家や市民、自治体の意見を取り入れ、早急に検討を行うこと(649億円もの経費をかけて実施するメリットは、調査結果の面でもプライバシー保護の面でもメリットが少ない)。

 2, すべての調査項目が国勢調査としての全数調査によらなくとも統計資料として作成することができる。労働力調査、住宅統計など他の調査を利用するなど、見直しに向けた検討を開始すること。

 3, 調査はプライバシー権に基づき、あくまでも本人同意を原則として実施すること。また、行政機関個人情報保護法の適用外と統計法で規定しているが、あくまでも個人情報保護法の対象とし、前記プライバシー権をふまえること。

 4, 今次調査においては、全世帯に封筒を配布するのであるから、回収も封筒による回収とすること。それが出来ない場合には「封筒に封入できる」ことを周知徹底すること。

 長沢克巳は「かけはし」2005年9月19日号で、次のように、国勢調査の問題点を明らかにしている。

 「もっとも問題となっているのは、調査員が調査項目を見るということ。おおよそ五十世帯を受け持つ調査員は、ほとんどがその居住する地域から選ばれ、顔見知りということが多い。原則民間人で区市町村長の推薦で総務大臣が任命する。調査の期間だけの非常勤の国家公務員だ」。

 「調査項目には世帯員の構成のほか、学歴、就労状況や勤務先の名称や所在地などもある。調査員が記入の誤りや漏れを確認するためと説明されているが、顔見知りに知られたくない、また守秘義務のある調査員が調査内容を漏らしているとの訴えが相次いだ。そして、前回二〇〇〇年調査で、総務省統計局は、小さなシールを配布し、調査票を説明用紙で包み封をする方法をとった。その結果、全国で一千万世帯を超える世帯が封入提出し、全国平均で二一・五%に達した」。

 「前回は全国八十万世帯で調査票が回収できなかった。東京では五・九%にも達した。調査票が未回収の場合、郵送での提出を認めるほか、調査員が性別や人員などについては近隣への聞き取り調査も行なっている。この数が多くなれば、調査の精度に関わる問題になる」。

 見直しを求める会などの運動の結果、今回の国勢調査で大きく変わったのは、一九二〇年の調査以来、初めて調査票の全世帯封入と郵送回収方式が採用された。回収については、調査員に渡すだけでなく、郵送、役所への持参(東京都ではインターネット回収がテスト採用)が可能となった。また、総務省自らがコールセンターを開設することになった。

 国の回収方法の見直しはもちろん、反対運動の成果ではあるが、同時に長沢が触れているように、前回が全国で九五・六%の回収率であり、これを大きく割る結果になれば、調査そのものに疑義が出てしまうからだ。封を提出して出せるという一見プライバシーを尊重しているかの方法によって回収率が上がるのではないかという期待に基づくものだろう。

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▲これも第一回国勢調査の記念はがき
いかにもカルト宗教のポスターにありそうな図柄。

 しかし、問題点は残っている。根本的には七百億円もかかる調査をやる必要があるかということ。今回調査員は七十万人で、自治体職員を含めると百万人を超えるだろう。調査の過程が権力に素直に従う人々をつくるということ。逆に言えば、調査に応じないことが「国に逆らう人」とされる雰囲気をつくりだす。「国勢調査には申告しなかったり、虚偽の申告、妨害した場合には統計法で罰則もある。だが、これまで、国勢調査に協力しないことを理由に適用された例はない。

 配偶者の有無や学歴欄は数十万人から二百万人が記入していないといわれている」(前記長沢)。個人のプライバシーを国家が勝手に使うことに対する、人々の抵抗は当然にも強まっている。

 東久留米市では、二十調査区を受け持つ調査員もいるとのこと。これは八百世帯であり、八日間で回らなければならないので、一家当たり十分かかるとすると一日十六・六時間も面接時間だけでかかることになり、調査が到底不可能と思われる地区もあるようだ。団地は高齢化していて、面接率が五〇%という所もあるという。さらに、町内会が疲弊していて、旧来だと調査員を五~六回やっている人が激減し平均二回だという。断固として拒否する人も多く、世帯の訪問は疲れると、調査員を募集しても集まらなくなっている。

 そして、封印回収が可能になったが、何も書かない人、一部しか書かない人に対してどうするか。総務省と話し合いをした「見直す会」によると、市区町村が調査票を審査する際、回答者に電話などで問い合わせをするが連絡が取れない場合、近隣の人に聞く。次にマンションの管理人に聞く。それが拒否された場合、役所がマンション管理会社お願いし、管理人に聞く。その内容は世帯主・人員・性別の三項目。

 これらが活用できなかった場合、住民基本台帳と外国人登録原票を活用し、氏名、性別、出生年月、世帯主との続柄、配偶関係、国籍の各項目を補完する、としている。

 「見直す会」は「国勢調査の結果が、住民基本台帳・ネットに埋め込まれ、国民総背番号制のような形で、市民を管理するのに使われるのではという懸念がある」と追及したのに対して、「調査目的以外に絶対使わない」と国は答えたという。「見直す会」によると、学術研究のためといいながら他の目的に使われたことが暴露されているという。

 「住民基本台帳と外国人登録原票を活用」の国勢調査への補完は、各自治体で定める個人情報保護条例との関係で大いなる問題だ。消費税大幅アップと納税者総番号制の導入が目論まれていること合わせ、個人のプライバシーを、住基ネットや外登票を使って知らない間に国家によって管理しようとするねらいを許してはならない。

 「国勢調査の見直しを求める会」は、インターネット上で掲示板をすでに開設しており、調査にあわせて今回も電話相談を開設する。疑義やいやがらせにあった人は電話を。

(M)

国勢調査電話相談=ホットライン
9月23日(木・休)~10月7日(金)13時~19時
電話03--5269--0943

カンパ 「プライバシー・アクション」郵便振替口座00100--6--413068

 国勢調査の見直しを求める会

http://www.ringo.sakura.ne.jp/~kokusei/saishin.html 

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