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民族抑圧に抗議するウィグル人民への弾圧を許さない
民族の煉獄を打ち破るプロレタリア国際主義を!



▲7日、弾圧で家族を当局に拘束された女性たちがデモ

新疆ウィグル自治区の政府所在地であるウルムチ市で、7月5日夜から6日早朝にかけて大規模な抗議行動が発生した。それは、6月26日に広東省韶関市の玩具工場で発生したウィグル人と漢人の出稼ぎ労働者同士の大規模な衝突で2名のウィグル人労働者が死亡したことに抗議したものであった。ウルムチでの抗議行動は当初の300人程度から一気に1000~2000名規模に膨れ上がり、その後解散を命じた警察と衝突が発生、当局側による発砲や拡大した騒乱などにより、多数の犠牲者が出た。国営の新華社は、新疆ウィグル自治区共産党委員会の李屹宣伝部長の談話として7月6日19時時点で、156人が死亡、1080人が負傷、逮捕者1434名に達したと伝えている。車両261台や商店203軒が焼かれ壊された。中国当局は大量の武装警察や特殊警察部隊を投入し、発砲をふくむあらゆる手段で抗議行動を押さえ込み、弾圧している。

中国の公式報道では、事件はラビヤ・カーディル総裁を代表とする「ウィグル世界会議」の扇動によるものであると早々に断定し、「分裂破壊活動は必ず敗北するだろう」と宣言した。在外敵対勢力によるテロ扇動というお決まりのシナリオは、昨年のチベット騒乱の際にも使われた。

だが本当の事件の背景はそんなところにあるのではない。新中国建国以前からの強硬な対トルキスタン(ウィグル)政策、新中国以降の民族政策、2001年911テロ以降に強化された中央アジア地域における対テロ戦争に名を借りた民族独立運動への一層の弾圧、資源開発の必要から大量に投入される漢民族資本、貧困解消の一環として沿海工業地帯に「輸出」されるウィグル人労働者が受ける差別、漢人社会によるウィグル人に対する社会的、経済的な差別その他その他、中国共産党が自画自賛してきた「中華民族」政策の限界こそが、今回の事件の真の背景である。


「サウスチャイナモーニングポスト」紙は、ウルムチでの抗議行動に参加した女性のインタビューを掲載している。「ママティー」と名乗るこの女性によると、当初300人ほどが人民広場で平和的に抗議行動を行っていたが、参加者が増加し、千人以上になったところで、警察が解散を命じた。ところが参加者たちはそれを拒否し、警察と衝突になったと証言している。

7月7日現在、女性を中心とした200名のウィグル民衆が「逮捕された家族をかえせ!」と完全武装した機動隊と対峙、衝突が発生している。また新疆ウィグルの最西部の都市、カシュガルでも抗議行動が発生している。民族抑圧に抗議するウィグル人民のたたかいはつづいている。


■「調和と安定」を最優先する中国政府

事件発生直後から画像や情報がインターネットを通じて国内外に発信されるやいなや、中国政府はインターネットの関連情報の削除などの情報統制を行った。そしてウルムチ市政府は、6日午前0時30分に次のような通告を発布した。

◎社会正常秩序を維持する緊急通告(ウルムチ市政府)
1.「中華人民共和国道路交通安全法」の関連規定により、2009年7月6日午前1時から8時(北京時間)まで、警察機関はウルムチ市の一部の区域で交通規制を実施する。規制管区内では、いかなる車輌も通行できない。
2.一切の事業所と個人は本通告に従い、自覚的に社会の正常秩序を維持すること。
3.本通告に違反したものは、警察機関が法に従い拘束処罰する。犯罪を構成するものは、法に従って刑事責任を追及する。
4.本通告は発布のときから施行される。

6日午前11時、新華社は自治区主席のヌル・ベリキの談話を伝えた。

==(以下、新華社ニュース)==

新華社 ウルムチ 7月6日電 新疆ウィグル自治区のヌル・ベクリ主席は、6日早朝にテレビ演説で次のように指摘した。

5日晩にウルムチで殴打、破壊、略奪、放火の重大犯罪事件が発生した。これは典型的な外国からの指揮による国内行動であり、陰謀的、組織的な破壊強奪事件である。各民族による磐石の団結によって、三つの勢力(過激宗教勢力、民族分裂勢力、国際テロ勢力:訳注訂正)の扇動襲撃は各民族人民によって必ず唾棄され、敵の分裂破壊活動は必ず敗北するだろう。

6月26日に広東省の韶関市のおもちゃ工場ではたらく一部のウィグル族労働者とこの工場のほかの労働者の間で暴力事件が発生し、数百人が殴打しあい、120人が負傷し、そのうち新疆籍の労働者が89人にのぼり、2名の新疆籍労働者が治療の甲斐なく死亡した。事件の発生後、三つの勢力が大いに騒ぎたて、チャンスに乗じて中国に対して攻撃を行い、街頭でのデモ示威行動を扇動し、国内の敵対勢力と呼応しあった。

(略)

ヌル・ベクリ主席は次のように語っている。「6・26事件は典型的な社会事件であったにもかかわらず、国内外三大勢力は大いに騒ぎたて、悪意をもって中国共産党と政府を攻撃し、事件の真相を知らない民衆をさまざまな手法で扇動して、示威デモ行進を行わせ、民族の団結を激しく破壊し、調和安定の局面を破壊した。」

主席は語る。安定は幸福であり、動乱は禍であることは歴史的に何度も証明されてきた。およそ民族団結が良好な時期は、心境の経済社会発展も速く、各民族人民が得ることのできる恩恵も多い。逆に、およそ民族団結が破壊される時期は、社会的動揺を招き、発展は停滞し、各民族人民は禍をこうむる。各民族人民の大団結と社会の調和と安定は新疆2100万人の各民族民衆を含む中華民族の最高の利益である。」

==(以上、新華社ニュース)==


■搾取と差別の「調和と安定」:6・26韶関事件

大規模な抗議行動のきっかけとなったのは、6月26日に広東省韶関市のおもちゃ工場「旭日玩具工場」の宿舎敷地内で発生した、ウィグル人労働者と漢民族労働者による大規模な衝突である。中国政府の発表だけでも、この衝突で118名が負傷し、うちウィグル人は79名、16人が重傷、2名のウィグル人労働者が亡くなったという。偶然この衝突を撮影していた人間が、インターネットでその映像を公開した。

http://www.youtube.com/watch?v=iaBoFdFC9EI&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=z-eAesqsxEw

6.26韶関事件では、現場に駆けつけた警官はほとんど介入をせず、数の上でも優勢であった漢人側のなすがままにさせていたという。数の上でも圧倒的であった漢人労働者による襲撃は翌早朝まで続いたという。

衝突の発端は、この工場を解雇された漢民族の労働者が、ウサ晴らしのためにインターネット上で、漢民族の女性が、この工場のウィグル人労働者らに強姦された、という虚偽の情報を流したことがきっかけだという。

「旭日玩具」は今年の5月から6月にかけて、新疆カシュガル地区から800名のウィグル人労働者を調達していた。

広東省共産党委員会書記の汪洋は大量のウィグル人労働者の存在意義をこう語っている。「(中国)沿海部の企業、とりわけ香港企業は積極的に内陸部、とくに少数民族地域で労働者募集をしている。沿海部は中央政府の呼びかけに応えて、先ず豊かになった地域があとに続く地域を支援し、沿海部と内陸部が共同で発展するという重要な政策を実施してきた。個別偶然の事件によってこの政策に影響を与えてはならない。内陸部とくに少数民族地区の人民に対する深い感情をもって、法に従い今回の事件を処理しなければならない。この偶然の事件が沿海部と内陸部の経済協力、民族団結に影を落とすことがあってはならない」。

だが、この「支援」と呼ばれる雇用政策とは、「監獄工場」と呼ばれる苛酷な労働環境のなかに内陸部の、とくに少数民族(ウィグル人)労働者を投げ入れるということに他ならない。香港を拠点に活動する国際労働者委員会(CWI=いわゆるミリタント派)のサイトに掲載された論評は次のように韶関事件の意味を分析している。

「この衝突は中国における一つの象徴的な意義を持っている。経済危機が、失業率の歴史的記録を更新させ(1949年以来の高率)、賃金を引き下げている(2億の出稼ぎ農民が数少ない雇用を奪い合う)。同時に官僚腐敗がすべての社会領域に浸透している。抗議の意思を示す手段は制限され、労働者自身の組織化も弾圧を受ける。当局に対する怒りは増すばかりだが、同時にそれは人種差別主義、犯罪、薬物、自殺、その他の絶望的な手段で表現される。韶関事件の補足をしよう。旭日実業の経営者(香港人)の資産は10億ドルを超えており、豪華な別荘と30台以上ものレーシングカーが停車する駐車場を所有している。韶関市の最低賃金は月500元。まさに今日の「二つの祖国」とでも言わんばかりの極端な光景が広がっているのである。出稼ぎ労働者は261年間、飲み食いもせず働いて得られる賃金でやっと一台のフェラーリーが買えるというありさまだ。このような低賃金労働は、いつの日にか悲劇的な結末をもたらすだろう。」
http://www.chinaworker.info/zh/content/news/787/より抄訳)

騒ぎがウルムチに拡大した7月7日、新華社は、旭日玩具工場事件の容疑者として13人の容疑者(うち3人が新疆ウィグル籍)と、インターネットでデマ情報を流布した2人を逮捕したというニュースを報道している。

中国政府が最優先に掲げる「調和と安定」は、資本家と官僚にとっての調和と安定であり、民族自決権を踏みにじった中華民族主義にとっての調和と安定に他ならない。

■89年民主化リーダーのウルケシが声明

89年民主化運動のリーダーの一人でウィグル民族のウルケシは、7月6日に声明を発表している。

「今回の事件は偶然に発生したものではない。その原因は長年積み重なってきた民族憎悪と大いに関係がある。広東省韶関市で発生したウィグル人と漢人の衝突はその導火線であり、名が年来のウィグル人と漢人の関係の縮図である。すなわち漢人のウィグル人に対する高圧的支配と抑圧が、我慢の限界に達していたウィグル人の抵抗を呼び起こし、さらなら憎悪の深まりを見せた。」

「政府は衝突の発生をすべて『テロ分子』『テロ攻撃』と形容し、ウィグル人に対処し、厳しい弾圧措置をとっているが、それは何ら問題の解決の助けにはならず、矛盾を更に激化させるものにしかならない。」

「私は、新疆ウィグル自治区を含む中国国内で、ウィグル人の民族自決権を含む民主主義が実施されることを強く主張する。独立を追求する事がウィグル人の直面する差別と抑圧を解決し、民族衝突と憎悪を解き解す最も現実的で最良の方法だとは思わないが、民族自決の権利を否定することはできない。」

「今日、新疆で発生している一切の不正義は、中国政府の覇権的心情と野蛮な政策が最大の原因である。わたしは世界が、この広大で、麗しく、同時に世界の安全と安定に密接な関係をもつ地域にさらなる関心を持ち、今回の事件で流された人々の血を無駄にしないよう呼びかける」

+ + + + +

中国における民主的で社会主義的な運動において、漢民族労働者・農民階級の中華民族主義はきわめて大きな桎梏となる。中華民族主義の旗の下にいっさいの階級的、エコロジー的、反官僚的闘争を屈服させてはならない。労働者階級の前衛は分離する権利を含む民族自決権を断固として主張し、社会的、経済的、政治的差別に抗議するウィグル民衆のたたかいに連帯しなければならない。大中華民族主義ではなく、国際主義にもとづいた民族自決権を!天皇制ナショナリズムではなく、プロレタリア国際主義を!

(H)


※その他の資料

◎王力雄『私の西域、君の東トルキスタン』を読む-新疆のパレスチナ化、或いはチェチェン化(燕のたより/第7回集広舎)
http://www.shukousha.com/column/liu007.html
中国独立ペンクラブの王力雄が2007年に台湾で出版した新疆ウィグル自治区への訪問ルポを日本語で紹介している。

◎思いつくままBlog
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki
この間のウィグル事件をめぐる中国人識者の論評などを精力的に掲載、翻訳している。王力雄氏のチベット関連の著述なども。

◎書籍『中国の民族問題 ― 危機の本質』(加々美光行/岩波書店)
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/60/0/6001940.html
「清末以降の近現代史と国際政治の動向の中にチベット,ウイグル,モンゴルを位置づけ,民族自決運動の実態,中国共産党の民族政策,ダライ・ラマ14世の主張等を紹介.『9.11』以降の反テロ国際連合が中国民族問題に及ぼした影響についても考察する」(岩波書店ウェブサイトより)
初期のコミンテルンや中国共産党が掲げていた民族自決の問題についても考察している。必読の書。

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