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データは百%警察が作成  戦前の特高警察の体質を継承
警察は「調査中」といい謝罪せず

 対テロ戦争型弾圧機関である警視庁公安部外事3課の人権侵害に満ちたデッチ上げ「書類」「報告書」等が何者かによってインターネット上に流出(10月28日)されてから1カ月以上たった。流出データは、2007年~09年にかけて作成された報告書など114点にも及んでいる。11カ国からアクセスがあり、毎日データが拡散し続 けている。

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▲民衆弾圧の「暴力装置」公安警察(11.13 反APECデモ)

 横浜APECを前に警察庁、公安警察は、2002年に外事三課を設置して以降、オウム危機に次いで上から下への大混乱に陥っている。流出犯捜しは、青木五郎公安部長も含めて外事第三課第1係(課内庶務)、第2係(国際テロ情報)第3・4係(外国人テロ情報)の150人の構成員をかたっぱしから取り調べるまでに至っている。だが超機密データにタッチできるのは、警察庁幹部、公安幹部に限られる性格のものだ。幹部間の不信は増幅され、所轄の公安警察官も含めて個人所有のコンピュータの捜査へと拡大していったが未だに流出犯を摘発できずにいる。

 安藤隆春警察庁長官は、11月24日、全国警察本部・警備・公安会議で「情報管理に万全を期す」ように指示しているにもかかわらず、流出データは「警察で作成・保管されたものかを含め現在調査中」などと繰り返すのみだ。こんなドタバタを演じつつ時間稼ぎをしているうちに第三書館が『流出「公安テロ情報」全データ イスラム教徒=「テロリスト」なのか? 』と題して、流出データを無修正で完全収 録した本を出版してしまった。流出本の初版2000部は、ほぼ完売したが、個人情報を掲載されたイスラム教徒数人が出版・販売の差し止めを求める仮処分を東京地裁に提訴し認められた(11月29日)。第三書館は、申し立人の個人情報を削除して再出版するという。

 公安は、流出データによって被害者が発生しているにもかかわらず公式な謝罪、安全のための財政措置、でっち上げ書類データの完全消去さえもまともに行っていない。朝日新聞でさえ「警視庁はなぜ謝らない」(12・1)と批判するほどだ。社会的な公安批判が高まっているにもかかわらず、沈黙を貫き通す公安を許してはならない。膨大な流出データの分析と批判は、民衆運動に敵対する公安の立ち振る舞いを許さないために重要な取り組みであり、共有化していく必要がある。

流出本の概要と公安警察の実体

 流出本の概要は、こうだ。「第1章 国際テロ対策の陣容」では「テロ対策142名の氏名・任務」「テロ対策員リストに人質交渉官5名の名前」「テロ対策刑事の素顔」が写真付きで流出されている。

 「第2章 事情聴取されたイスラム関係者たち」では、イスラム教徒をテロ犯予備軍として捜査、訊問を繰り返していることがわかる。国籍、氏名、電話番号、旅券番号、職業、家族構成、交友関係などを一人一人調べ上げ、人権侵害、差別・排外主義丸出しの報告書だ。同時に「協力者」「情報線」の獲得工作の報告書も流出し、その実態が明らかとなっている。トータルで六百人以上にも膨れ上がった。「モロッコ大使館コックから情報収集」「ハマスに好意をもつパレスチナ人の事情聴取」「テロリストへ流出可能性ある資金の情報持っている可能性あり」などと断定するのだ。この延長でイラク大使館関係者、モスクの監視と捜査。「元アルジェリア人の妻」であることが理由で日本女性が「要監視対象」になっていた。

 「要警戒対象の視察行確」作業は、イスラム教徒が集うモスクを監視するために拠点としてマンションを借り上げ、218人の公安を24時間ローテーション配置、14台の車両配備するほどの無駄遣いを繰り返している実態も明らかになっている。しかし、どこにもテロ犯人などは潜んでおらず、テロ情報のほとんどがニセ、インチキなものであることが結果報告で書いているのが大半だ。要するに公安の延命のために「仕事」を作り出すという単純な取り組みとなっている。

 第3章は、「国内のイスラム・コミュニティを監視せよ」は、モスクだけではなく各団体、食料店等の個別調査まで広げている。「特異動向」などと位置づけて出入り総数、リスト、追跡調査までやり、事後報告リストを積み上げているのだ。予断と偏見に満ちた公安の手口は、例えば、イスラム、アフリカ料理店をピックアップし、テロ犯の「集合場所」「インフラ機能を果たすおそれがあり」などと決め付け監視を続けている。

 第4章は、在日イラン人を中心にした監視、尾行、調査報告書だ。とりわけ「イラン大使館の給料支払いを東京三菱銀行の協力で調査」「イラン大使館員50名の全給料明細」「イラン大使館からの振込口座・金額明細」まで報告書作りをやってのけている。当然、銀行側は、公安の資料提出要求に対して無条件に提出してきた。さらにレンタカー会社、ホテル業、化学・薬品会社なども顧客リスト、利用者情報を公安に言われるままにホイホイと提供している始末だ。

 さらに「第5章 テロ対策の全体像」、「第6章 FBI等への情報交換データ」も流出した。在日米軍の爆発物処理研修、米空軍特別捜査局の機密情報まで流出してしまったために警察庁幹部が、横浜APECで来日していたオバマ大統領に極秘で面会し謝罪していたことが複数のメディアに流れている。

逃げ切りを計るみえみえの魂胆

 このような流出データだけでも総括的に見ると、かつて警察庁公安課長だった松本光弘(現在、福島県警本部長)がまとめた『グローバル・ジハード』(講談社、2008年)で対テロ陣形についての骨格を明らかにしていたが、同書の第3部で「テロ・グループの組織形態/テロを防ぐための手法/グローバル・ジハードと闘うために」の実践結果として一致する点が多々存在していることがわかる。つまり公安流出データは、対テロ陣形作りの中味を「見事」に提供してしまったのである。

 とりわけ流出データの「平成21 年1 月14 日  国際テロリズム対策課 関東地域国テロ担当補佐等会議概要」では、「インターネット上の不審情報の収集では、インターネットが過激化対策上、必要不可欠なツールとなっている現状に鑑み、限定的なチャットルームに対する情報収集」を強調している。その手法は、「対象者特定の経緯は情報線を当該チャットルームに参加させ、半年以上の期間をかけて対象者と信頼関係を構築の上、対象者の自宅や携帯電話番号等を把握し、特定しました」とスパイ運営の手引きさえも披露している。

 「コミュニティ対策」では、差別主義に貫かれた主張が繰り返されている。ムスリム・コミュニティは、「日本人が入り込む 余地のない外国人だけで生活できる日本の中の外国のような地域が犯罪の温床になったり、テロリストの隠匿場所になったりするおそれが大きいため、共生による取組みで地域にとけ込ませるようにすることでその動きを把握しようとするものである」などと潜入捜査、スパイ獲得のための手法を具体化している。

 さらに「ムスリム第2世代の把握」を行えと言っている。その理由として「15歳以上のムスリムについては就職適齢年齢であり、ホームグローンテロリストの脅威になりうる存在であります」と断定する。その把握方策として、「・子供のためのコーラン教室参加者から把握 ・自転車の防犯登録のデータベースにより把握 ・スクールサポーター等を通じた把握(イスラム教を起因とする学校における相談事案等の取扱い)」などをあげている。

 第二世代は、「ムスリム特有の行動や外見上の違い等に起因するいじめや差別」「イスラムの教えを実践させようとする親の意向とそれを望まない本人との対立」があるから、「 これらの問題は将来、日本社会に対する不満へと発展し、その不満が第二世代の過激化の要因となる可能性もあります」などと手前勝手な解釈でテロリスト予備軍だと断定し、不審情報の収集を行えと号令をかけている。こんな調子で差別・排外主義、人権侵害のオンパレードで国際テロリズム対策課の会議が行われているのである。

 このような公安の捜査姿勢は、戦前の特高警察の腐敗・堕落・反動化体質を継承したものだ。最近の事案でも国松孝次警察庁長官銃撃事件時効に対する態度は、典型的な居直りだった。デタラメ捜査を直視することもなく、「警察庁長官狙撃事件 捜査結果概要」を公表しオウムの組織的犯行だと決めつける公安部長の「恥の上塗り」会見を行った。

 公安にとって流出データは、公安が作成したものであり、流出犯とその共犯者が公安警察官であることだけは絶対に避けなければならないのだ。たとえ犯人を特定していても公安幹部、構成員であれば公安政治警察の崩壊へと直結してしまうからなんとしてでももみ消しで逃げ切ろうとする魂胆がみえみえだ。警察庁、公安政治警察は、自らの犯罪を棚上げし、自己保身にひた走ることで必死なだけなのだ。公安警察のすべての犯罪を暴き出し、解体していかなければならない。

      (Y)

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