アジア連帯講座のBLOGです
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
民主化を求める元旦デモに参加した中学生たち。
「劉暁波の釈放」「普通選挙がほしい」と書かれたプラカードを手に。
5月16日、香港では五つの選挙区で立法議員(国会議員にあたる)の補欠選挙が行われた。中国政府の意向を受けた香港政府が引き延ばす立法議員と行政長官(香港の首相にあたる)の直接選挙を2012年に実施することを求める民主派の議員ら5人が今年1月に辞職し、補欠選挙に再立候補した。(参考:香港元旦デモに3万人~直接選挙と民主化を求めて)
5月16日の選挙の結果は、全5選挙区において、辞職した5人の民主派候補全員が再選を果たした。
これに対して、親中派、体制派の政党はメディアをはじめとするさまざまな手段を用いて「ボイコット」を呼びかけてきた。選挙後、体制派政党やブルジョアメディアは、直近の2008年の立法会選挙の投票率45.2%、投票者数152万人だったのに対して、今回の補選は投票率17.1%、投票者数58万人という低投票率だったことを理由に「いわゆる『行政長官・立法議員の直接選挙を問う住民投票』を掲げて辞職・再出馬した議員らは世論から信任されなかった」というバッシングを繰り広げている。
◎普通選挙から逃亡した香港ブルジョアジーと中国共産党
だが実際はどうなのか。親中派政党、ブルジョア政党はどの選挙区からも立候補しなかった。いや、事実上立候補できなかったといったほうがいいだろう。直接対決で敗北することを恐れたからだ。さらに投票日の前日、自らの選出方法を問われている当の行政長官・曾蔭權は「明日の選挙は投票しない。政府の各局長クラスも投票しないことを自主的に決めた」などと発言し、香港ブルジョアジー、そして中国共産党の意向を代弁した。民主主義の破壊行為である。
今回の補選に対して後ろ向きなのは何も親中派だけではない。民主派最大の集団である民主党も、今回の選挙には非協力的で、事実上のボイコット戦術をとった。
だが得票結果を見れば、直接選挙にかけた香港市民の思いは明らかである。
◎得票数を大きく伸ばして圧勝したラジカル民主派
今回の補選運動をリードした社会民主連線(社民連)の梁国雄候補は、2008年の4万4千票から今回は10万8千にその得票数を倍増させた。社民連全体の得票数では08年15万3千票から27万8千票と55%も得票数を増加させている。そうじて五人すべてが他の候補者を大きく引き話して圧勝を果たしている。
香港ブルジョアジーと中国共産党は、ブルジョア民主主義の最高到達点であり、民主的社会主義にとっての最低限のベースである普通選挙で信を問うことすらできないことを明らかにした。
香港・先駆社の劉宇凡同志は、「一票を通じて中国共産党の独裁体制に抗議しよう」という5月13日付の論文で、この運動に非協力的な民主党を「中国共産党に妥協してきた20年来の運動はすでに完全に破産している」と徹底して批判する一方、この運動の呼びかけ主体であるラジカル民主派の「社会民主連線」の候補者への投票を呼びかけつつも、社民連を階級協調的で、ヨーロッパ型の社民路線(=社会自由主義)を目指していると批判している。(劉同志の論文はやや長いので後日あらためて翻訳して紹介する予定である)
以下は、今回の補選の前に書かれたもので、補選の意味を簡潔に紹介したマレーシア社会党の華僑党員ウェブサイトからの翻訳である。
(H)
=========
香港:5月16日は五選挙区住民投票に決起しよう
2010/5/13 原文
香港の社会民主連線(社民連)と公民党は共同で「一刻も早い普通選挙の実現と職能別選挙区の廃止」を掲げた「五選挙区住民投票、全民決起」運動を呼びかけた。社民連と公民党の五人の議員、梁国雄(新界東)、黄毓民(九龍西)、陳偉業(新界西)、梁家傑(九龍東)、陳淑庄(島嶼)は、2010年1月に議員を辞職し、香港の五選挙区における補欠選挙が実施されることになった。投票日は2010年5月16日である。
親中国政府で大企業の利益を代表する保守派はこの補欠選挙に全面的に抵抗し、さまざまな手段を通じて棄権を呼びかけている。〔議員辞職に非協力的な〕穏健民主派(民主党や民主民生共進会など)は「最終的な普通選挙連盟」を立ち上げ妥協的な対話路線を主張し、「五選挙区住民投票」運動の障害になっている。青年たちで結成された「大学選科2012」運動は補欠選挙運動に参加し、補欠選挙を事実上の住民投票にする取り組みをスタートさせ、「五選挙区住民投票」運動は活発に推進されてきた。5月16日には民主主義を求める香港民衆にとっての重要な一里塚となるだろうし、またピープルパワーを示す日にもなるだろう。
香港の民主化運動は1980年代から始まった。当時まだイギリスの植民地であった香港では、中国への返還を巡る社会的議論が政治体制の問題にまで発展した。1989年の6・4天安門事件は香港にも大きな影響を及ぼし、中国民主化運動に対する北京当局の残酷な暴力的弾圧に、100万人以上の香港市民が街頭デモで抗議した。それはストライキや商店閉鎖、授業ボイコットなどにまで発展し、香港における民主化運動の高まりをみせた最初であった。
2003年7月1日の香港返還6周年記念日には、50万人の香港市民が香港「基本法」23条の立法化に反対してデモ行進し、香港民主化運動における新たな一頁を記した。民主派の主流派である指導部エリートは民主化運動を独占してきた。穏健さと理性を強調し、妥協的な姿勢を示して北京政府による民主化の恩賜を求めることで、民主化運動は前進しなかった。
ここ数年、社民連を代表とするラジカル民主派によって民主化運動はあらたな推進力を得ることとなった。香港の保守的社会を突き動かし、多くの青年達の支持を得てきた。社民連が率先して呼びかけた「五選挙区住民投票」運動は、有権者に対して投票行為で決起することを呼びかけ、権力者の急所をつくことで、香港民主化運動にさらなるイマジネーションスペースを拡大するという積極的な意義を有する。
香港は高度に「発達」した自由市場の資本主義社会であり、五区少数の資本家が政治との癒着を通じて富を独占し、それにより貧富の格差が深刻化している。民主的な普通選挙を実現することで、香港社会が直面する富の分配の不公正という根本的問題がすぐに解決することはないかもしれない。
もしも民主主義政治システムが今後も利益最優先の資本主義経済の枠組みの下で運営されるのであれば、民主主義が人々の経済的問題を解決することはできないだろう。それゆえ、民主化闘争は、人々の経済的課題や人民の基本的権利および社会的平等を実現する抵抗運動と結合してはじめて、実質的に意義のあるものとなるだろう。「五選挙区住民投票」運動は、民主主義と社会正義を実現するスタートとなり、それに続くさらなる大規模な大衆的動員へと発展するかもしれない。
香港の友人たちを応援しよう。
五選挙区住民投票の実施、職能別選挙区の廃止を支持しよう。
特権階級を打倒し、政財癒着を終わらせよう。
PR