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「Newsweek」(ニューズウイーク)日本版2月11日号は「資本主義VS社会主義」というカバータイトルで、「トロツキスト政党が大人気 共産主義に揺れるフランス」と表紙に見出し。
本文では4ページにわたり「郵便局員が率いる『共産主義』革命」という、LCR、反資本主義新党とブザンスノー同志にスポットライトを当てた記事が。ブザンスノーを「サルコジ大統領の『最強の対立候補』」だとしています。
また英労働党下院議員で元欧州担当相のデニス・マクシェーンが書いた「左のうねりが怒れる街を覆う」と題した記事では、「フランスの社会主義政党(社会党?)は5年にわたる主導権争いで有権者に相手にされなくなったが、そんな空白を埋めたのが『反資本主義新党』だ。若い郵便配達員オリビエ・ブザンスノが、ばらばらの政治勢力を旧共産党のような勢力にまとめ上げ、次の選挙では最大20%の票を獲得する可能性がある」としています。
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(特集の一部がネットで読めます)
サルコジ脅かす急進左派の郵便局員ブザンスノhttp://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090204-00000000-newsweek-int
ニューズウィーク日本版2月 4日(水) 13時 4分配信 / 海外 - 海外総合
経済危機の前から資本主義に懐疑的だったフランスで、レイオフ禁止や最低賃金3割増を訴える34歳の革命家が一躍スターに
トレーシー・マクニコル(パリ支局)
経済の激変や近代史上最悪の景気後退など一連のグローバル危機は大規模な惨状が続き、想像を超えることが次々に起こっている。歴史ある銀行が破綻し、市場は乱高下して、企業の救済が一夜で決まり、世界のあらゆる勢力の指導者はあわてて首脳会談を開き「資本主義を再考」している。
世界は大混乱に陥っているが、フランス人は今さら動じることはない。彼らはグローバル社会のシステムに対し、ずっと疑念をいだいてきたのだから。
フランス人は自分たちがグローバル化の恩恵にあずかっているときでさえ、かなり警戒してきた。危機に際して団結しようという政府の呼びかけをはねつけ、1月29日には全国で市民がデモを決行。社会システムが混乱するかなり前から政府が約束していた改革を、やめさせようとしている。
実際、フランス社会は左派寄りの主流政党や、混沌として不明瞭で内部抗争の絶えない社会党を飛び越えて、革命的共産主義者同盟(LCR)の幹部で急進左派の旗手オリビエ・ブザンスノ(34)に目をつけた。トロツキーとチェ・ゲバラを愛するブザンスノは、レイオフ(一時解雇)の禁止や、最低賃金を3割増やして全国民が月300ユーロの収入増につながる支援などを要求している。
銀行の国有化がアメリカやイギリスなど各国でにわかに現実味を帯びるなか、ブザンスノはさらに踏み込んだ政策を求める。銀行と保険会社を経営破綻かどうかに関係なく国が接収し、市民が運営する巨大な公的銀行サービスを設立しようというのだ。
さらに、LCRの機関紙「ルージュ」で次のように主張している。「経営陣が所有権の共有を拒否し、労働者による管理に反対するなら、所有権の没収と労働者による企業の自己管理を要求する」
フランス以外の国なら、トロツキスト政党であるLCRに属する漫画のキャラクターのようなスポークスマンは、傍流として片づけられるだろう。しかしフランスでは、現役の郵便局員であるブザンスノはスター的存在だ。
■27歳で大統領選候補に
支持率は60%に達し、そのうち45%は彼の影響力が増すことを期待する。民主運動党首で中道のフランソワ・バイル(44%)や、社会党党首で新社会主義のマルティーヌ・オブリ(42%)など主流派の指導者を上回る期待だ。
社会党支持者の62%は、党の有力者よりブザンスノの政治的影響力に期待を寄せる。さらに昨年12月の世論調査では4カ月連続で、中道右派のニコラ・サルコジ大統領の「最強の対立候補」に選ばれた。これは社会党に対する侮辱にほかならない。
これからLCRに代わる新政党「反資本主義新党」(仮称)を率いることになるブザンスノは、この人気を利用するだろう。新党は、マイノリティーの権利や環境問題などのポスト物質主義を交ぜ合わせた共産主義的革命という彼の主張を掲げる。偏狭なイメージがつきまとうLCRという党名を捨て、6月の欧州議会選挙に向けて支持基盤を広げようというわけだ。
ブザンスノの政界デビューは02年の大統領選で、LCRの候補者として「オリビエ・ブザンスノ、27歳、郵便局員」というシンプルなスローガンで注目を集めた。
5年後の大統領選にも再び立候補。候補者の平均年齢より22歳若い現役の郵便局員は、4%の得票率で12人の候補中5位につけ、ほかの極左候補を引き離した。
今や全国区のブザンスノは若さと郵便局員という肩書を武器に、国民が革命にいだく神話的イメージに過激なメッセージで訴える。「歴史の瞬間に立ち上がり、反抗して、(フランス革命や1968年の学生主導の5月革命のように)一時的な暴力も辞さないとする考え方」だと、政治学者のドミニク・レーニエは言う。
同時に、ブザンスノはベビーブーム世代の心の琴線にも触れた。彼らは超強力な雇用保障と早期の潤沢な年金を享受したツケで、自分たちの子供は学歴に見合わない低賃金の仕事しかないという罪悪感にさいなまれている。
■社会党のコンプレックス
「討論やインタビューでオリビエ・ブザンスノとやり合うのはむずかしい」と、レーニエは言う。「強硬に論破しようとすれば、こちらが若者をいじめる非道な人間のように思われる」
郵便局員であることも強みだ。全国の小さな町の郵便局が経営維持に苦しむなか、郵便局員は国が国民を守ることを表す最も友好的な代理人だ。国民の平等を保障する公共サービスであり、すり切れた社会をつなぐ重要な糸とみなされている。
昨年は陽気な郵便局員を描いたコメディー『シュティの国にようこそ』がフランス映画として国内で予想外のヒットを記録。ブザンスノが大きな青いかばんを提げて黄色い自転車にまたがり郵便物を配達するというイメージは追い風となり、「僕はプロの政治家じゃない」という名言を神格化する。
ブザンスノの人気は、フランスの左派のアイデンティティーの苦悩から生まれた。パリ政治学院フランス政治研究所のジェラール・グランベルクは、社会党は100年前から左派にコンプレックスをもち続けてきたと語る。「おまえたちは改革主義でリベラルだ、われわれ左派こそ本物の社会主義だと言われてきた道徳的、イデオロギー的な強迫観念が常にある」
だから革命とは程遠い社会党も、急進左派をあえて切り捨てはしない。その結果、97~02年の連立左派内閣は週35時間労働を導入する一方で、フランス史上最も精力的に民営化を進めた。しかし気まぐれな経済政策で社会党は信用をなくし、失望したブルーカラーと公共部門の労働者の心をとらえたブザンスノが躍り出た。
今日の社会党は、ブザンスノによって左に引き寄せられている。世論調査の専門家デニス・パンゴーは新著『ブザンスノ効果』で、彼の支持基盤は拡大していて忠誠心も強まっており、社会党は呼応せざるをえないと指摘する。
サルコジはブザンスノを極右の国民戦線党首ジャンマリ・ルペンになぞらえ、追随する社会党をなじった。昨年11月の社会党党首選では、雇用相時代に週35時間労働を導入したオブリが極左派と連携し、中道寄りのセゴレーヌ・ロワイヤルを僅差で破った。
一方でサルコジは、ブザンスノの所属する過激な組織は方法論が「無責任」だと非難。ブザンスノは大統領が「社会運動を犯罪化している」と応戦した。それに対し院内総務が、「オリビエ・ブザンスノは極左の最も攻撃的で最も暴力的な要素を体現している。われわれは彼と戦う」と宣言した。
サルコジは極左に直接対決を挑むことにより、国を挙げた議論から社会党を巧みに締め出している。これは、彼が個人的や政治的にときどき左に振れることを嫌悪する与党内の保守派をなだめることにもつながっている。
■「プロ」になれない事情
ブザンスノはグローバル危機のさなかにあって、「反資本主義新党」で挑む欧州議会選挙を待ち望んでいる。比例代表制の選挙は反体制派であっても少数政党に有利で、国内の政権に対する信任投票の代わりになりがちだ。
05年に行われた欧州憲法の批准をめぐるフランスの国民投票で、ブザンスノは憲法が経済的にリベラルすぎるとして反対運動を繰り広げ脚光を浴びた(批准は否決)。今年6月の欧州議会選挙を前に、世論調査で新党は正式に発足する前から8%の支持を集めた。
ただし新党は、素人が真の権力を求めるというブザンスノ自身と同じ矛盾に直面している。スターである彼が立候補すれば票は伸びるだろうが、「プロの政治家」になるために郵便局員を辞めれば個人的な信望があせる。この問題と党名は今週末に議論される。
傍流を自負するプレーヤーが国政にこれほどゆがんだ影響力をもちうることは、深い機能不全をうかがわせる。経済危機が世界をさらに左へ動かしたことによって、自分で自分の手足を縛ってきた社会党の無能ぶりが際立ち、政治発言が過激化しかねない。そしてすべてが白紙に戻って未来が見えない時期に、最悪のタイミングで最悪の策を打つリスクが高まる。
経済大国の一つであるフランスにとって、目の前の危機から抜け出すだけでも、今のところとりあえず機能している社会システムの下では難題だ。