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  鳩山政権は、3月28日に朝鮮の無償化に関する結論を参院選後に先送りし、文部科学省が設置する「第三者機関」に結論をゆだねることを決定した。

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▲鳩山政権による朝鮮学校無償化除外に抗議して800人が結集(3.27 東京) 

 4月実施予定の「高校無償化」をめぐり、中井洽・拉致担当相は2月23日午前の閣議後記者会見で、在日朝鮮人の生徒らが通う各地の朝鮮学校を対象とするかどうかについて、川端達夫文部科学相に対して「(経済)制裁をしている国の国民ですから、十分考えてほしい」と要請していたことをあきらかにした。また、それをうけて首相の鳩山は「必ずしも(朝鮮学校の)教科内容が見えない」などと語り、「(無償化から)除外する方向だ」などと語った。

  この一連の発言は、「在特会」らの主張する「朝鮮学校はスパイ・テロリスト養成所」などの悪罵を政府閣僚が裏書きするものであり、一つの「ヘイトスピーチ」ですらある。そもそも、「拉致問題」と在日コリアンそして朝鮮学校は何らの関係もない。朝鮮学校の無償化除外は、「拉致」を理由にした在日コリアン全体への攻撃であり、これはナチの行った「ユダヤ人一人の犯罪はユダヤ人全体に償わせる」とした「集団的懲罰」と何が違うというのだろうか。

 鳩山政権の言う「第三者機関」の設置そのものが問題は多いと言わざるを得ない。一つは、文科省がどのような基準で、「第三者機関」のメンバーを選任するのかあきらかではない。そして、「第三者機関」が、朝鮮学校の教育内容やカリキュラムに介入するということは、あらゆる教育現場に国家が介入して注文をつけ、従わなければ無償化対象から外すということに直結することになりかねないだろう。たとえば、キリスト教系の学校や入学式や卒業式で日の丸・君が代の掲揚・斉唱を拒否している学校へと「政府介入」が拡大しない保障はどこにもない。

  また、本国のカリキュラムで授業をしている日本政府未認可のブラジル人学校やペルー人学校の多くも、朝鮮学校同様に、現在のところ無償化除外対象とされている。このように鳩山政権の「無償化除外論議」は、社会的少数者たちの民族的・宗教的アイデンティティーを培う教育を否定しながら、一律的な「日本民族教育」を強制していくという事態に道を切り拓くものだ。断じて許すことはできない。

  一方、橋下徹・大阪府知事は3月12日、大阪府東大阪市と大阪市生野区の朝鮮学校2カ所を視察した際の記者会見で「金総書記の肖像画を外す」、「使用する教科書の記述で"敬愛なる金総書記"などと個人崇拝の表記をやめる」挙句に「竹島や日本海の呼称について、日本側の主張も併記するなどの配慮をする」などを無償化の条件に挙げている。まったく傲慢極まりない教育現場への介入として、この橋下の発言を糾弾する。

 そもそも、日本政府・文科省が強制してきた日の丸・君が代を使った「日本民族教育」が、「個人崇拝教育」と比べて何が違うと言うのだろうか。右派の常套句である「日本に住むなら日本を愛せ」などと言うのは、特定の価値観に過ぎず、橋下は「民族教育」を否定してその特定の価値観を社会的少数者である人々に押し付けているのである。しかし、橋下のような態度・言説こそが、在日コリアンの人々を反発させて金独裁体制の側に追いやることになるし、追いやってきたのだ、と指摘しておこう。

 「個人崇拝」の問題は、在日コリアン自身によって乗り越えられるべき事柄であり、公権力が介入するべきものではない。また、日韓併合とその後の朝鮮植民地支配への先鞭をつけた独島(竹島)支配に関する「侵略史観」を在日コリアンに押し付けようなどという許しがたい攻撃である点も看過できない。橋下ら右派は、次には「捏造された『慰安婦』問題を教えるな」、「強制連行問題は少なくとも両論併記にしろ」などと、要求をエスカレートさせてしてくるのは想像に難くない。

  また、橋下は、この機会を最大限に利用して、府がこれまで朝鮮学校に対し支給してきた生徒一人当たり年間約7万円の振興補助金を留保するとしている。日本政府は、歴史的に国からの朝鮮学校への公的な助成を一切拒否して国連の委員会から繰り返し是正勧告を受けてきたが、在日コリアンが闘いとってきた権利をも奪おうというのである。一連の「無償化除外」の動きに関して、国連の人種差別撤廃委員会があらためて「子どもたちの教育に差別的な影響を及ぼす行為」と勧告しているにもかかわらず、橋下は民族差別をさらに扇動しているのだ。

  このように、多様な価値観による教育を否定し、政府による教育現場への介入にあらたな道を拓くのが高校無償化除外問題だ。しかし、社会的少数者の民族的・宗教的アイデンティティーの集団的維持を政府と社会全体が保証するなどというのは、いまや世界の趨勢といっても過言ではない。鳩山は「東アジア共同体構想」を口にし、「日本列島は日本人だけのものじゃない」などと語って右翼から攻撃されたが、それが実は新自由主義的な意図からのものでしかないことが、このかんの「無償化除外論議」によって問わずあきらかになった、と言えるだろう。「そうではない」と言うのなら、鳩山政権は朝鮮学校の無償化除外を断念しろ!
  
  3月27日には、朝鮮学校無償化除外に反対する緊急行動が東京・代々木公園で行われ、一週間の呼びかけで朝鮮学校生徒を中心とした在日コリアンと支援者ら800人が結集した。今後、全国で同様の動きがうねりとなる様相だ。連帯の輪をさらに広げて、朝鮮学校とすべての高校の即時無償化を勝ち取ろう。

 (F)

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