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米国の金融危機に対して米国の社会主義者、労働組合活動家はどのように闘っているのか。以下に掲載するのは、「レイバー・スタンダード」ウェブサイトに掲載されたビル・オナーシュの分析と提案である。「レイバー・スタンダード」は米国のトロツキスト組織の一つだった元FIT(第四インターナショナル・テンデンシー)の活動家が編集しているウェブサイト。
ビル・オナーシュはベテランの労働組合活動家で、同ウェブサイトの編集担当。この文章の中で彼は、金融危機を単独で捉えるのではなく、石油危機や環境危機との連関で捉え、アフガン・イラクでの戦争の中止を出発点とした「平和でグリーンな」経済システムへの転換、金融・エネルギー・交運産業などの国有化・計画化に向けた討論の開始を呼びかけている。
三つの緊急危機
http://laboradvocate.blogspot.com/2008/09/three-alarm-crisis.html
ビル・オナーシュ
確かに「危機」という言葉は過剰に使われすぎている。この言葉は、ナオミ・クライン(訳注1)が『ショック・ドクトリン 惨害資本主義の登場』などの著作で巧みに示しているように、金持ちの支配階級の利害にふさわしいものだ。システム的な変革が必要な「自由企業」にとって慢性的で固有の、労働者階級を直撃する多くの深刻な問題が存在する。
しかしわれわれは、シニカルな「狼の遠吠え」を繰り返す連中のパニックに抗しつつ、緊急の行動を求める危機的状況があることを認識する必要がある。私は、現在そうしたものを三つ特定することができる、と考えている。
第一は金融・信用危機である。
人工的で持続不可能な不動産価格の高騰を作りだした住宅バブルは、より大規模な信用破壊の一部にすぎない。多くの人びとは今や、不動産抵当だけでなく、交通機関、医療・保健、大学教育などで利子返済できるよりもはるかに巨額の負債を背負っている。米国における現在の緊急の救済努力は、納税している労働者階級から取り上げて、取り立て不能な債務の支払いのための巨額の富を移転する金の流れを維持するためのものである。この救済策が承認されようと、それが承認されずに日々の信用支払いを枯渇させる結果になろうと、アメリカの労働者にとっては失うものばかりの情勢である。
石油価格の暴騰と石油不足は、世界経済のあらゆる部門に否定的影響を与えており、それは当面終わりそうにない。
第三は気候危機である。
とりわけ、われわれが知っているように人間生活そのものへの脅威となっている地球温暖化危機は、最近の最も悲観的な見通しよりもはるかに急速に進んでいる。極地とグリーンランドの氷が溶け、海水温度が上昇する中で、われわれは幾億人もの人びとの住居を危険にさらす海水面の上昇を間もなく見ることになるだろう。われわれはもはや後戻り出来ない地点に近づいている。しかし温室効果ガスの排出はなお増えており、米国だけを取ってみても、大規模な沖合油田の掘削と泥板岩の抽出が近々議会での承認を受け、二十八の石炭火力発電所が建設中であり、二十以上が建設承認を得ている。ゴア前副大統領でさえ、破滅的な石炭火発の増設を止めるために、若者たちに市民的不服従を呼びかけている。
しかしゴアは、「部分的例外が通則」ということの証明である。企業と政治的支配者たちは、こうした挑戦課題のいずれに対しても受け入れられる解決策を持ってはいない。そしてわれわれの労働組合や主流の環境運動の指導者たちは、体制に従っている。こうしたことによって彼らは深刻な問題の一部になっているのであり、決して解決をもたらさないのである。
労働組合や環境グループなどの現存の諸組織を通じて共に活動する下からのイニシアチブが必要なことは明らかであり、この三つの緊急の危機に立ち向かう綱領と戦略を討論するための特別の組織に、組織に属さない人びとを引き入れることが必要である。
私の意見では、こうした討論は、より広範囲な緊急の回答を計画するためにギアを入れ換えるべきである。今週初め、現在のカナダの選挙運動での不適切な党の政綱について、イアン・アンガス(訳注2)は次のように書いている。
「気候変動問題について取り組むことを本当に望んでいる党ならば、気候緊急事態を宣言するだろう。それは第二次世界大戦の経験から学ぶだろう。その時、カナダ政府は数カ月で、雇用喪失や賃金カットもない経済全体のラディカルな変革を押し進めた」。
もちろんそれは、米国についても言える。米国は戦時にさらに目ざましい経済的動員を行い、それによって最終的に大恐慌から国を引っ張り上げたのである。これは、米国において労働者と環境活動家を統一させる努力の中で、われわれの多くが提起した例である。環境危機に関して、こうした大胆なステップに踏み出す上で、われわれは他の二つの問題も同様に注意深く扱うだろう。
しかしわれわれは、戦時の経験を改善できる。企業のコストに上積みして利潤を保障するのではなく、われわれは金融、エネルギー、運輸部門――そのオーナーたちは、緊急事態を引き起こした責任者である――を国有化できるし、すべきである。公共投資の資金について、われわれは労働、環境、科学界の代表をこうした部門の現実的計画化と経営に引き入れるべきである。
われわれはこうした公共計画のための資金を、グローバル資本の利益にのみ奉仕するイラクとアフガニスタンでの戦争を終わらせることによって、まかなうことができる。そしてわれわれはこうした活動に全力を上げながら、もっと多くの核兵器を生産するというとんでもない行為に終止符を打とう。
この経済の緊急の再組織化は「公正な移行」という原則に従うべきである。それは生活水準を保障しつつ労働者を再訓練し、グリーンで平和的な経済の中で別の職場に配置するということである。
私は変革のためのいかなる青写真も提示するものではない。私は行動計画を定式化するための討論の開始を提案している。それを始めるために適切な場は、「レイバーノーツ」ネットワーク、「センター・フォー・レイバー・リニューアル」(労働運動刷新センター)など、すでに労働運動の変革のための活動に関わっている人びとの間でだろう。「ソーシャリスト・アクション」(訳注3)紙に掲載された金融危機に関するアーロン・バスのすばらしい分析など、左翼グループの一部も非セクト主義的な対話に関心を持っているように思える。
しかし私はその目標が行動計画であるべきことを強調する。われわれは諸問題の討論をいつまでも続けることもできる。われわれはすべてを正しく解決するのではない。しかし地球は火に包まれており、経済はボロボロに崩壊している。そして好むと好まざるとにかかわらず、われわれは「最初の応答者」なのである。
(08年9月26日)
訳注1 ナオミ・クラインはカナダ・モントリオール生まれのジャーナリストでラディカルなグローバル・ジャスティス運動の活動家。邦訳書に『ブランドなんか、いらない』、『貧困と不正を生む資本主義を潰せ』(両著ともまつの出版刊)がある。
訳注2 イアン・アンガスはカナダの「気候と資本主義」ウェブサイトの編集者で、「ソーシャリスト・ボイス」(カナダ英語圏の第四インター支持者が発行する新聞)の寄稿者。本紙6月9日号、同6月16日号に彼の「食糧危機パート1、パート2」を訳載。
訳注3 「ソーシャリスト・アクション」は米国西海岸を中心に活動している第四インターナショナル派の組織で、同名の月刊機関紙を発行している。
(米「レイバー・スタンダード」のウェブサイトより)