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8月23日、法務省は三名の死刑を執行したことを発表した。まだ発足してから一年足らずの安倍政権で、三回に渡って十人の死刑を執行したことになる。まるで「美しい国の浄化作戦」とでも言わんばかりのハイペースの死刑執行であり、また、内閣改造直前の「駆け込み執行」という、「実績=数字」を残すための「死刑のための死刑」である。絶対に許すことは出来ない。



言うまでもなく、死刑は「国家秩序のための犯罪者の抹殺」という究極の社会的排除であり、「人間は変わりうる」という人間性の可能性を国家があらかじめ否定する行為である。このような国家による人間性の否定こそが、社会を荒廃させるということに思いが至らないのだろうか。一体どれだけ犯罪者を処刑すれば、犯罪を「撲滅」できるというのだろうか。政府は「死刑による犯罪の抑止力」を理由に死刑制度を正当化するが、フランスなどの死刑廃止国と比較して、死刑存置国がどれだけ犯罪を「抑止」できているというのだろうか。「死刑による犯罪の抑止力」を証明するデータなど、どこにもないのである。 


昨今、被害者家族の「復讐感情」に依拠した死刑肯定論が、マスメディアの大キャンペーンとして喧伝されている。被害者家族の犯罪者への「復讐感情」それ自体は仕方のないのことではあるが、「法秩序」とは「復讐感情の代行」として存在しているものではないし、そうあるべきでもない。また、死刑執行によって「復讐感情」のやり場を失った被害者家族が自殺する例すらある。国家・政府のなすべきことは「犯罪者の抹殺」や「復讐の代行」などではなく、被害者家族の感情を納得させるまでの犯罪者の一生をかけた真摯な反省と謝罪を促すことである。失われた生命を新たな殺人によって、どうして贖うことができるというのだろうか。 


sayamap3.jpgそして、日本は「冤罪の温床」と言われる代用監獄制度をいまだに保持している国家である。帝銀事件の平沢貞通さん、狭山事件の石川一雄さんなど冤罪への闘いと一定の世論が存在しなければ、少なくない罪なき人々が国家によって処刑される一歩手前だったのである。平沢さんや石川さんのように意思表示することが出来ないままに、冤罪者が処刑された例が必ずあろうことは想像に難くない。 


2004年の段階で、死刑廃止国は120カ国に達し、死刑存置国 78カ国を大きく上回っている。かつての「死刑大国」の一つだったトルコは、EU加盟に際して、死刑廃止条約に2004年に署名した。いわゆる「先進国」で、死刑存置国は日本とアメリカとロシアのみであるが、アメリカでは多くの州ですでに廃止され、ロシアでは1999年に憲法裁判所が死刑判決を命ずることを正式に禁止した。日本はG8のなかでも最低ランクの「人権後進国」なのである。 


死刑制度廃止は世界のすう勢である。いつの日か、日本でも廃止される日は来るだろう。未来の人々が死刑制度について、「国家によってなんて残虐なことが行われていたのだろう」と語る日は必ず来るのである。そして世界の多くの国では、すでに「その日」は来ているのである。死刑制度の存廃は、その国の民衆の「人権意識」のバロメーターとも言えることであり、日本が「人権後進国」として国際的に指弾されることを恥じなければならない。 


 安倍政権-長勢法相による三名の死刑執行-虐殺糾弾!
 究極の社会的排除・死刑制度を今すぐ廃止せよ! (F)

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死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90 の抗議声明


抗 議 声 明

 本日、竹澤一二三さん(東京拘置所)、瀬川光三さん(名古屋拘置所)、岩本義雄さん(東京拘置所)に死刑が執行されたことに対し、強く抗議する。
 竹澤一二三さんは上告をせずに確定しており、岩本義雄さんは控訴を取り下げており、最後まで審理が尽くされていない状態で執行された。瀬川光三さんは近年、弁護人や家族、支援者との交流を一切絶たれていた。

 長勢甚遠法務大臣は、昨年12月25日に4名もの大量処刑を行ってからわずか4カ月後の今年4月に更に3名の死刑執行をし、今回の3名で、在任中合計10名の執行を行ったことになる。1977年以降、大量処刑を行っている法務大臣でも、最高7名であり、このような短期間に、多人数の執行を行った法相は存在しない。これ
は、法務大臣による独断的な刑事政策の改悪であると断じざるを得ない。

 また、8月27日には内閣改造、国会開会後はすでに長勢氏は法務大臣ではない可能性が大であり、執行の責任を追及されることを免れようとして、この時期を選んで行ったものに他ならず、姑息と言うほかない。

 また、最近の常軌を逸した厳罰化の流れの中で、03年までは年間2~7人だった死刑確定者が04年は14人、05年は11人、06年は20人、本年はすでに17人と激増し、確定者が107人を超えていた異常な状態で、確定者の人数を減らす目的のために執行を急ぐ行為は、確定判決の増加を更に加速させようとするものであって、極めて政治的に行われた死刑執行である。

 死刑は、残虐な刑罰であり、民主主義の理念に真っ向から反するものである。死刑には犯罪抑止効果がないばかりか、かえって、社会の倫理観を荒廃させる。死刑に必ず冤罪があることは、免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件の再審無罪で証明されたところである。死刑は直ちに廃止されなければならない。
 死刑廃止は国際的な潮流であり、すでに世界の3分の2以上の国と地域で死刑は廃止されている。日本は、国連や欧州連合など国際社会から強く死刑廃止を求められている。今回の死刑執行はおよそ許されるべきものではない。
  今回の死刑執行は安倍内閣において3回目であり、国家が人を殺す国など「美しい国」であるはずがなく、更に安倍内閣が掲げる再チャレンジという政策にも真っ向から反するものであって、その欺瞞性に強く抗議する。

 われわれは、日本政府および法務省並びに法務大臣に対し、今回の死刑執行に強く抗議するとともに、直ちに以下の施策を実施するよう求める。
1 死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けて努力すること。 2 死刑に関する情報を公開すること。 3 死刑確定囚に対する処遇を抜本的に改善すること。 4 犯罪被害者に対する物心両面にわたる援助を拡充すること。
 また、最高裁判所並びに全国の裁判所に対して直ちに死刑の濫用を止め、死刑判決を差し控えるよう強く求める。


2007年8月23日


死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90

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