アジア連帯講座のBLOGです
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●強制併合は「合法」・被害者への「補償」には応じない
菅内閣は八月十日午前の閣議で、「日韓併合百年」にあたっての首相談話を決定した。首相談話は、「三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられました」と述べている。そして「歴史に対して誠実に向き合いたい」と訴え、「自らの過ちを省みることに率直でありたい」と語るとともに「痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることはできない」「この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省とお詫びの気持ちを表明いたします」と述べている。
ここでは「その意に反して行われた植民地支配」という文言に見られるように韓国政府の意向に一定の配慮を示した表現が見られることは確かである。そして「日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたい」とも述べている。韓国の李明博政権は、この「朝鮮王朝儀軌」の「お渡し」について評価しているようである。菅談話は、発表に先立って八月十日の早朝に李明博大統領に伝えられ、李大統領から「真心のこもった談話」との肯定的評価を得た、とされる。
しかし決定的な問題は、一九〇五年以来の三次にわたる日韓協約による韓国の「保護国」化やその結果としての一九一〇年の「韓国併合条約」が、軍事的・政治的強圧を通した強制によるものであってそもそも違法・無効なものであるという韓国側の主張を無視し、「法的に有効に締結され、実施された」という戦後の日本政府の一貫した主張を一歩も修正していないことである。
菅内閣は八月十日午前の閣議で、「日韓併合百年」にあたっての首相談話を決定した。首相談話は、「三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられました」と述べている。そして「歴史に対して誠実に向き合いたい」と訴え、「自らの過ちを省みることに率直でありたい」と語るとともに「痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることはできない」「この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省とお詫びの気持ちを表明いたします」と述べている。
ここでは「その意に反して行われた植民地支配」という文言に見られるように韓国政府の意向に一定の配慮を示した表現が見られることは確かである。そして「日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたい」とも述べている。韓国の李明博政権は、この「朝鮮王朝儀軌」の「お渡し」について評価しているようである。菅談話は、発表に先立って八月十日の早朝に李明博大統領に伝えられ、李大統領から「真心のこもった談話」との肯定的評価を得た、とされる。
しかし決定的な問題は、一九〇五年以来の三次にわたる日韓協約による韓国の「保護国」化やその結果としての一九一〇年の「韓国併合条約」が、軍事的・政治的強圧を通した強制によるものであってそもそも違法・無効なものであるという韓国側の主張を無視し、「法的に有効に締結され、実施された」という戦後の日本政府の一貫した主張を一歩も修正していないことである。
それは「一九一〇年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結された条約及び協定は、もはや無効」(1965年の日韓基本条約第2条)というあいまいな規定によって、韓国併合条約のそもそもの不法・無効性を否定し、「請求権」問題などはすべて解決済みとする日本政府・外務省の居直りを、菅政権が踏襲していることに示されている。菅首相は「首相談話」等に関する記者会見の発言の中で、「朝鮮王朝儀軌」について「返還」ではなく「お渡し」という言い方をしているのは「請求権」については完全に解決済みという立場によるものだ、と明言した。これは今後も「補償」等については一切応じるつもりはない、という宣言である。
●村山談話より後退した部分
「日韓併合百年」にあたっての菅首相談話は、「終戦五十年」にあたって一九九五年八月十五日に出された自民・社会・さきがけ連立政権時代の村山首相談話の線を引き継いだものとされる。村山談話は「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明したいと思います」と述べていた。
その後の歴代政権(かの安倍政権もふくめて)が継承しているこの村山談話は、どの時期にどのように国策を誤り、どのような損害と苦痛をアジアの人々に与えたかについてふれず、まったく抽象化・一般化しており、かつ天皇の戦争責任を否定するものだった。今回の菅談話もまた韓国国民の「意に反した植民地支配」と述べるものの、国と文化を奪い、「民族の誇りを傷つけ」た植民地支配の実相について触れることはない。その結果として強制連行、軍隊「慰安婦」、民族的・文化的資産の略奪などへの補償をいっさい拒否するものとなっている。菅談話による「植民地支配への反省とお詫び」は、まさに尊厳を奪われた韓国の人々の公正な被害補償の要求を、「未来志向」の名で拒否する論理に貫かれているのである。
村山談話と比べても大きく後退した部分がある。たとえば村山談話にあった「偏狭なナショナリズムを排し」という言葉が、菅談話からは完全に消えていることである。今日、十五年前と比較しても、「偏狭なナショナリズム」の動きは、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)に見られるように、とりわけ韓国・北朝鮮、中国への露骨な排外主義・レイシズムとして暴力的に突出したものになっている。それは在日韓国・朝鮮人や中国人の民主主義的諸権利、人権・生存権そのものを直接的に脅かすものとなっている。
この「偏狭なナショナリズム」=レイシズムに同調する勢力は、菅が代表する民主党内部においても少なからぬ位置を占めている。それは、外国人地方参政権法案が容易に日の目を見ないことにも示されている。
玄葉光一郎公務員制度改革相・民主党政調会長は首相談話を「拙速」として露骨な不快感を示し、日本会議国会議員連盟に属する松原仁衆院議員は「内閣が代わるたびにこうした談話を出すのであれば、永久に自虐的な国家から脱却できない」(8月11日、読売)と批判した。「偏狭なナショナリズム」批判の欠落は、菅内閣を支える民主党内の党内力学にも規定されている。
●強制併合正当化する「産経」
自民党の安倍晋三元首相や「たちあがれ日本」の平沼赳夫代表らは、八月六日に「日韓併合百年」にあたっての首相談話発表の動きに対して「軽率な発表に断固反対する」との共同声明を発表し、院内で記者会見を行った。賛同者には民主党出身の松沢成文神奈川県知事、上田清司埼玉県知事も加わった。安倍は同日、谷垣自民党総裁に会って、菅首相に談話の発表をやめるよう申し入れ、党として反対の声明を出すよう求めた。八月十日の首相談話に対して谷垣は「談話が日韓の未来志向の外交関係に妨げとなったのではないかと強く懸念する」と批判した。
極右レイシズムのオピニオンリーダーである「産経新聞」は、八月十一日の「主張」欄(社説)で「『自虐』談話は歴史歪める 解決済みを蒸し返す連鎖断て」との表題で、菅談話を罵った。
「菅談話は明治以降の日本の先人たちの努力をほぼ全否定し、韓国の立場だけを述べている。どこの国の首相か疑ってしまう。/35年間に及ぶ日本の朝鮮統治には、反省すべき点もあるが、鉄道建設や教育の普及など近代化に果たした役割は大きい。朝鮮名を日本式の姓名に変える創始改名や日本語教育も行ったが、それらは強制されたものではない」。
このように韓国強制併合と朝鮮植民地支配を正当化する「産経」の「主張」欄は、菅談話によって「日韓基本条約で解決済みの対韓補償問題が蒸し返される恐れもある」とキャンペーンし、返す刀で自民党谷垣総裁の「軟弱さ」をも切り捨てている。「自民党の谷垣総裁も5日の記者会見で『(首相談話を)出す必要があるのかどうか大きな疑問だ』と言っていたが、談話発表の直前には菅首相に『村山談話を逸脱しないよう』求めるにとどめた。野党のリーダーがこのような認識では、姿勢が疑われる」と、言いたい放題である。
●支配階級主流派は菅談話を支持
他方、「産経」を除く、朝日、読売、毎日、日経などの八月十一日付社説は、ニュアンスの差はあれ、「菅談話支持」でほぼ共通している。
「共感できる認識だ。私たちも重く受け止めたい。……今回、日本政府が保管する朝鮮王朝の文書を韓国に渡すようにしたのは良いことだ」(朝日)。
「補償問題には一切触れられておらず、この問題を決着済みとする従来の政府の立場に変更はない。当然のことだ。/その上で、未来志向の日韓関係の構築を強調するなど、妥当な内容と言えよう」(読売)。
「昨年政権交代を果たした民主党にとっては政権政党として初めて迎えた8月だ。そして、100年前のこの時期に併合条約が締結・公布され日本による植民地支配が始まった。談話は、その節目にあたり新政権として意思表明を行ったものとして意義がある。前向きに受けとめたい」(毎日)。
「閣議決定した首相談話は、この歴史の事実を重視しつつ、未来志向の日韓関係を構築する意思を表明したものだ。/こうしたメッセージが日韓関係に横たわる歴史問題を和らげ、両国の協力強化につながるならば、日本にとってもプラスだ。……もちろん首相談話や朝鮮半島由来の史料の引き渡しが、65年の日韓基本条約で法的に解決済みの請求権問題などをめぐる議論を再燃させないよう努める必要がある」(日経)。
「未来志向」の日韓関係構築にとって、今回の首相談話はプラスだ、しかし「請求権」は決着済みだから蒸し返すな――このあたりが、財界など支配階級主流の認識なのだろう。
「東アジア共同体」構築を中軸とする二一世紀の経済発展と地域安定のためのイニシアチブにむけた日韓協力という菅談話を貫く方向性は、まさしく支配階級の共通認識である。しかし、グローバル資本主義の危機と中国の躍進・日本の「陥没」への恐怖は、「産経」の論調に代表される排外主義・レイシズムの流れを促進している。
●近代史の総括をかけた闘い
八月十日に発表された韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)声明は次のように菅談話を厳しく批判している。
「今回の談話で、過去の過ちを振り払い未来志向的関係を築くとの日本政府の中身のない言葉遊びを改めて確認することができた。今回の談話は、一九九五年八月に戦後五十年を迎えて発表された村山談話から一寸の発展もなかった」。
「一九九五年の談話後、約十五年間、国連やILOなど国際機構は、数回にわたり日本政府に日本軍『慰安婦』被害者に法的責任を取ることを求めてきており、今も国連とILOでの要求は続いている。アメリカと欧州連合をはじめとした世界各国議会でも、日本政府に日本軍『慰安婦』被害者に対する謝罪と法的賠償などを求める決議を採択した。韓国と日本地方市議会では、日本政府に『慰安婦』問題解決を求める決議が湧水が吹きあがるように継続している。それにもかかわらず、菅総理の談話にはこのような国際社会の要求に対する答弁を全く反映させることができなかった。また十数年の間、日本大使館前で毎週水曜日に日本政府に謝罪と賠償を求めている高齢の日本軍「慰安婦」被害者たちの要求についても、解決策を提示できなかった」。
このように述べた挺対協声明は、「植民地被害者の問題解決のための迅速な行政的・立法的措置」を強く求めている。それこそが「平和的で友好的な紐帯関係」のための条件である、と。
われわれはこの訴えに応えなければならない。「韓国併合百年」にあたり今こそ「韓国強制併合」の違法・無効性を確認し、日韓基本条約の見直し・再締結と植民地支配被害者への謝罪と補償の法制化を。拉致被害者問題の解決を含む日朝国交交渉の即時開始と国交正常化を。朝鮮半島の緊張緩和と東北アジア非核地帯の実現を。米軍基地の撤去・日米安保条約の破棄を。
日本の労働者・市民は、近代史の総括をかけて排外主義・植民地主義との闘いを決意しよう。(K)
●村山談話より後退した部分
「日韓併合百年」にあたっての菅首相談話は、「終戦五十年」にあたって一九九五年八月十五日に出された自民・社会・さきがけ連立政権時代の村山首相談話の線を引き継いだものとされる。村山談話は「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明したいと思います」と述べていた。
その後の歴代政権(かの安倍政権もふくめて)が継承しているこの村山談話は、どの時期にどのように国策を誤り、どのような損害と苦痛をアジアの人々に与えたかについてふれず、まったく抽象化・一般化しており、かつ天皇の戦争責任を否定するものだった。今回の菅談話もまた韓国国民の「意に反した植民地支配」と述べるものの、国と文化を奪い、「民族の誇りを傷つけ」た植民地支配の実相について触れることはない。その結果として強制連行、軍隊「慰安婦」、民族的・文化的資産の略奪などへの補償をいっさい拒否するものとなっている。菅談話による「植民地支配への反省とお詫び」は、まさに尊厳を奪われた韓国の人々の公正な被害補償の要求を、「未来志向」の名で拒否する論理に貫かれているのである。
村山談話と比べても大きく後退した部分がある。たとえば村山談話にあった「偏狭なナショナリズムを排し」という言葉が、菅談話からは完全に消えていることである。今日、十五年前と比較しても、「偏狭なナショナリズム」の動きは、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)に見られるように、とりわけ韓国・北朝鮮、中国への露骨な排外主義・レイシズムとして暴力的に突出したものになっている。それは在日韓国・朝鮮人や中国人の民主主義的諸権利、人権・生存権そのものを直接的に脅かすものとなっている。
この「偏狭なナショナリズム」=レイシズムに同調する勢力は、菅が代表する民主党内部においても少なからぬ位置を占めている。それは、外国人地方参政権法案が容易に日の目を見ないことにも示されている。
玄葉光一郎公務員制度改革相・民主党政調会長は首相談話を「拙速」として露骨な不快感を示し、日本会議国会議員連盟に属する松原仁衆院議員は「内閣が代わるたびにこうした談話を出すのであれば、永久に自虐的な国家から脱却できない」(8月11日、読売)と批判した。「偏狭なナショナリズム」批判の欠落は、菅内閣を支える民主党内の党内力学にも規定されている。
●強制併合正当化する「産経」
自民党の安倍晋三元首相や「たちあがれ日本」の平沼赳夫代表らは、八月六日に「日韓併合百年」にあたっての首相談話発表の動きに対して「軽率な発表に断固反対する」との共同声明を発表し、院内で記者会見を行った。賛同者には民主党出身の松沢成文神奈川県知事、上田清司埼玉県知事も加わった。安倍は同日、谷垣自民党総裁に会って、菅首相に談話の発表をやめるよう申し入れ、党として反対の声明を出すよう求めた。八月十日の首相談話に対して谷垣は「談話が日韓の未来志向の外交関係に妨げとなったのではないかと強く懸念する」と批判した。
極右レイシズムのオピニオンリーダーである「産経新聞」は、八月十一日の「主張」欄(社説)で「『自虐』談話は歴史歪める 解決済みを蒸し返す連鎖断て」との表題で、菅談話を罵った。
「菅談話は明治以降の日本の先人たちの努力をほぼ全否定し、韓国の立場だけを述べている。どこの国の首相か疑ってしまう。/35年間に及ぶ日本の朝鮮統治には、反省すべき点もあるが、鉄道建設や教育の普及など近代化に果たした役割は大きい。朝鮮名を日本式の姓名に変える創始改名や日本語教育も行ったが、それらは強制されたものではない」。
このように韓国強制併合と朝鮮植民地支配を正当化する「産経」の「主張」欄は、菅談話によって「日韓基本条約で解決済みの対韓補償問題が蒸し返される恐れもある」とキャンペーンし、返す刀で自民党谷垣総裁の「軟弱さ」をも切り捨てている。「自民党の谷垣総裁も5日の記者会見で『(首相談話を)出す必要があるのかどうか大きな疑問だ』と言っていたが、談話発表の直前には菅首相に『村山談話を逸脱しないよう』求めるにとどめた。野党のリーダーがこのような認識では、姿勢が疑われる」と、言いたい放題である。
●支配階級主流派は菅談話を支持
他方、「産経」を除く、朝日、読売、毎日、日経などの八月十一日付社説は、ニュアンスの差はあれ、「菅談話支持」でほぼ共通している。
「共感できる認識だ。私たちも重く受け止めたい。……今回、日本政府が保管する朝鮮王朝の文書を韓国に渡すようにしたのは良いことだ」(朝日)。
「補償問題には一切触れられておらず、この問題を決着済みとする従来の政府の立場に変更はない。当然のことだ。/その上で、未来志向の日韓関係の構築を強調するなど、妥当な内容と言えよう」(読売)。
「昨年政権交代を果たした民主党にとっては政権政党として初めて迎えた8月だ。そして、100年前のこの時期に併合条約が締結・公布され日本による植民地支配が始まった。談話は、その節目にあたり新政権として意思表明を行ったものとして意義がある。前向きに受けとめたい」(毎日)。
「閣議決定した首相談話は、この歴史の事実を重視しつつ、未来志向の日韓関係を構築する意思を表明したものだ。/こうしたメッセージが日韓関係に横たわる歴史問題を和らげ、両国の協力強化につながるならば、日本にとってもプラスだ。……もちろん首相談話や朝鮮半島由来の史料の引き渡しが、65年の日韓基本条約で法的に解決済みの請求権問題などをめぐる議論を再燃させないよう努める必要がある」(日経)。
「未来志向」の日韓関係構築にとって、今回の首相談話はプラスだ、しかし「請求権」は決着済みだから蒸し返すな――このあたりが、財界など支配階級主流の認識なのだろう。
「東アジア共同体」構築を中軸とする二一世紀の経済発展と地域安定のためのイニシアチブにむけた日韓協力という菅談話を貫く方向性は、まさしく支配階級の共通認識である。しかし、グローバル資本主義の危機と中国の躍進・日本の「陥没」への恐怖は、「産経」の論調に代表される排外主義・レイシズムの流れを促進している。
●近代史の総括をかけた闘い
八月十日に発表された韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)声明は次のように菅談話を厳しく批判している。
「今回の談話で、過去の過ちを振り払い未来志向的関係を築くとの日本政府の中身のない言葉遊びを改めて確認することができた。今回の談話は、一九九五年八月に戦後五十年を迎えて発表された村山談話から一寸の発展もなかった」。
「一九九五年の談話後、約十五年間、国連やILOなど国際機構は、数回にわたり日本政府に日本軍『慰安婦』被害者に法的責任を取ることを求めてきており、今も国連とILOでの要求は続いている。アメリカと欧州連合をはじめとした世界各国議会でも、日本政府に日本軍『慰安婦』被害者に対する謝罪と法的賠償などを求める決議を採択した。韓国と日本地方市議会では、日本政府に『慰安婦』問題解決を求める決議が湧水が吹きあがるように継続している。それにもかかわらず、菅総理の談話にはこのような国際社会の要求に対する答弁を全く反映させることができなかった。また十数年の間、日本大使館前で毎週水曜日に日本政府に謝罪と賠償を求めている高齢の日本軍「慰安婦」被害者たちの要求についても、解決策を提示できなかった」。
このように述べた挺対協声明は、「植民地被害者の問題解決のための迅速な行政的・立法的措置」を強く求めている。それこそが「平和的で友好的な紐帯関係」のための条件である、と。
われわれはこの訴えに応えなければならない。「韓国併合百年」にあたり今こそ「韓国強制併合」の違法・無効性を確認し、日韓基本条約の見直し・再締結と植民地支配被害者への謝罪と補償の法制化を。拉致被害者問題の解決を含む日朝国交交渉の即時開始と国交正常化を。朝鮮半島の緊張緩和と東北アジア非核地帯の実現を。米軍基地の撤去・日米安保条約の破棄を。
日本の労働者・市民は、近代史の総括をかけて排外主義・植民地主義との闘いを決意しよう。(K)
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